不機嫌を表に出す人の心理|職場や家族の人間関係や対処法についても解説

身近にいる「不機嫌を表に出す人」にどう接すればよいか悩んでいる方もいるでしょう。

職場で上司や同僚が無言でイライラしていたり、家庭で家族が不機嫌な態度を取ったりすると、周囲は気を使いすぎて疲れてしまうものです。

不機嫌を隠さず表す人には、幼少期の環境や性格、ストレスの蓄積など、さまざまな心理的要因が関係していることがあります。

本記事では不機嫌を表に出す人の心理や特徴を解説しながら、職場や家庭での人間関係への影響、そして具体的な対処法を紹介します。

相手の感情に振り回されず、冷静に対処できる考え方と行動のヒントが得られるので、ぜひ参考にしてください。

不機嫌を表に出す人は幼稚?心理や特徴

不機嫌を隠さず表に出す人を見うと、「大人なのに幼稚では」と感じることがあります。

しかし、裏側には深い心理的な要因が隠れている場合が多いです。

自分の感情をうまくコントロールできず、周囲に理解してほしいという思いが強くなると、不機嫌という形で表現してしまいます。

ここでは、不機嫌を表に出す人の代表的な心理や特徴を分かりやすく解説します。

自分のことを理解してもらいたい

不機嫌を表に出す人の多くは、「わかってほしい」という強い承認欲求を心の奥底に抱えています。

本音を言葉にする勇気が持てず、黙り込んだり無愛想な態度を取ったりすることで、自分の気持ちを察してほしいと願っているのです。

このような態度の背景には、幼少期に気持ちを受け止めてもらえなかった経験や、感情表現を我慢してきた過去が関係していることがあります。

監修医師コメント
尾内 隆志
尾内 隆志

「不機嫌でいれば相手が気づいてくれる」という学習が繰り返されると、大人になっても同じ方法で気持ちを伝える傾向が残ることがあるでしょう。

他人のせいにしたい

不機嫌を表に出す人は、自分の不満やストレスを処理できず、他人にぶつける傾向があります。

いわゆる八つ当たりであり、責任転嫁によって一時的に心の負担を軽くしようとする心理です。

例えば、仕事で上司に注意された後に同僚や部下に対して冷たい態度を取る、家庭での不満をパートナーにぶつけるなどが典型例です。

本人も悪気がない場合が多いのですが、感情の矛先が常に外に向いていると、周囲との信頼関係が崩れやすくなります。

本来は自分の中で解消すべき怒りや不満を他人に向けてしまうため、トラブルの連鎖が生じます。

他者をコントロールしたい

不機嫌な態度は周囲を思い通りに動かそうとする心理的コントロールの一種でもあります。

黙り込む、ため息を付く、冷たい視線を送るといった行動は相手に「なにか悪いことをしたのでは」と思わせ、罪悪感を利用して自分の望む反応を引き出そうとするものです。

本人は無意識のうちにこの方法を身につけており、相手の行動を支配する手段として不機嫌を使う傾向があります。

不機嫌な態度を多用すると短期的には効果があっても、長期的には信頼を失い、人間関係の悪化につながります。

周囲に気を配る余裕がない

精神的に追い詰められている人は、自分のことで頭いっぱいになり、他人に気を配る余裕を失いやすくなります。

仕事のプレッシャーや家庭の問題などでストレスが限界に達すると、怒りやイライラが態度として表面化します。

決して悪意があるわけではなく、感情をコントロールする力が低下している状態であると考えられます

心の余裕がないと、他人の言動を過剰に受け止めたり、些細なことにも反応してしまいます。

最近不機嫌な時間が増えたと感じる人ほど、実は助けを求めている可能性があります。

不満を上手く言葉にできない

自分の感情をうまく言葉にできない人は、態度で不満を示す傾向が強いです。

何が深いなのかを整理できず、イライラした態度や沈黙という形で周囲にサインを送ります。

これらの行動は「どうせわかってもらえない」という諦めや、自己表現への苦手意識から生じることもあります。

監修医師コメント
尾内 隆志
尾内 隆志

不満を上手く言葉にできない方は、言葉で説明できないため誤解を招きやすく、周囲との関係がぎくしゃくしやすくなります。

感情の言語化が苦手が手な人ほど、心のなかでは大きな葛藤を抱えていることを理解しておきましょう。

育ちが関係している可能性も

不機嫌を表に出すクセは、幼少期の家庭環境や親との関わり方が影響している場合があるでしょう。

親が感情的だった家庭や、気持ちを我慢するよう育てられた環境では、感情表現の仕方を学べないまま大人になることがあります。

その結果、怒りや悲しみをうまく処理できず、不機嫌という形で感情を発散するようになります。

また、親が不機嫌で相手を動かす姿を見て育った人は、その行動を有効な手段として学習してしまうこともあります。

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【職場・家族など】不機嫌を表に出す人が陥りやすい人間関係

不機嫌な態度を繰り返す人は、周囲の信頼関係を失いやすくなります

たとえ悪気がなかったとしても、常に不機嫌そうな表情や言動が続くと周りは気を使いすぎて距離を取るようになります。

職場では評価が下がり、家庭ではコミュニケーションが減少するなど、関係の悪化につながることが多いです。

以下で不機嫌がもたらす人間関係の悪化を解説します。

周囲との信頼関係が崩れる

不機嫌な態度を日常的に見せる人は、周囲からの信頼を失いやすい傾向があります。

たとえ直接的な言葉で攻撃しなくても、ムスッとした表情・ため息・無言の圧力といった態度は、周囲に「自分が否定されている」と感じさせてしま場合があります。

すると相手は安心して会話や相談ができなくなり、信頼関係は徐々に崩壊していきます。

職場ではチームワークや情報共有が滞る要因となり、家庭では一緒にいるのが辛いと感じる時間が増えてしまいます。

周りから距離を置かれる

不機嫌な態度を繰り返している人は、知らないうちに周囲の人を心理的に遠ざけています。

常に機嫌が悪そうにしていると、話しかけづらい空気が生まれ、周囲はトラブルを避けようと距離を置くようになります。

特に職場では会話が減少することで情報共有が滞り、チーム全体の雰囲気が悪化する原因となります。

また家庭や友人関係でも「一緒にいても楽しくない」「いつ気分が変わるか分からない」と思われ、関係が徐々に希薄になります。

本人は無意識での行動だったとしても、周囲が心を閉ざしてしまえば孤立が深まることは避けられません。

職場では自分への評価が下がる可能性あり

職場において不機嫌な態度を常に示す人は、協調性がないとみなされ、信頼や評価を落とすリスクがあります。

感情的な態度は業務上のストレスや人間関係の問題と誤解され、周囲が接しづらくなる要因にもなります。

上司からは「扱いにくい部下」、同僚や部下からは「雰囲気を悪くする人」と捉えられやすく、結果としてキャリア面でもマイナス評価となる可能性が高いです。

仕事の成果よりも態度が印象に残りやすいため、実力を正当に評価してもらえなくなることも少なくありません。

家族間のコミュニケーションが減る

家庭では不機嫌な態度が続くと家族が会話や接触を避けるようになります。

子どもや配偶者が「また怒っている」と感じるたびに緊張感が家庭内に広がり、自然な会話の機会が減少します。

気づかないうちに「話しかけてもムダ」「どうせ機嫌が悪くなる」と思われ、家庭が安心できる場所ではなくなる危険性があります。

監修医師コメント
尾内 隆志
尾内 隆志

家庭内で不機嫌な空気が長期間続くと、パートナーが精神的に疲弊するケースが多いでしょう。

その結果、離婚や別居など、夫婦関係そのものの破綻につながる場合がありますので注意が必要です。

不機嫌を表に出す人への対処法

身近に不機嫌を表に出す人がいると、つい自分のせいかもしれないと考えることがあります。

しかし、相手の不機嫌の原因を自分の責任と感じる必要はありません。

感情的な態度に巻き込まれないためには冷静さを保ち、適度な距離を取る意識が大切です。

相手の不機嫌に左右されない

不機嫌をあらわにする人に対しては、相手の感情に振り回されない姿勢を保つことが最も重要です。

不機嫌な態度を取る人は、自分の感情を他人にぶつけて安定を保とうとする傾向があります。

相手の機嫌に敏感に反応してしまうと無意識のうちに相手のペースに巻き込まれてしまうのです。

自分がなにか悪いことをしたのではと考える必要はありません。

あくまで相手の内面の問題とし、自分の行動とは切り離して考えることが大切です。

感情的に反応せず、淡々と接することで相手の不機嫌に影響されにくい安定した人間関係を築けます。

冷静な態度で適度な距離を保つ

不機嫌な人に対しては無理に機嫌を取ろうとせず、適度な距離を保つことも効果的です。

感情的に反応したり、過剰に同情したりすると、相手が「自分を優先してもらえる」と認識し、同じ行動を繰り返す可能性があります。

冷静な態度を保ちつつ、必要以上に関わらないよう意識することで相手の不機嫌に引きづられにくくなります。

距離を取るとは避けるのではなく、自分の心を守るための境界を意識することを意味します。

状況が落ち着いたタイミングで、穏やかに話す機会を持つことも関係を保つためのひとつの方法です。

信頼できる人に相談をする

相手の不機嫌が続く場合や、自分だけで対応するのが難しいと感じるときは、早めに信頼できる人へ相談することも大切です。

特に職場では、不機嫌な態度が業務やチームワークに影響することがあります。

上司や人事、信頼できる同僚などと状況を共有することで、客観的にアドバイスやサポートを受けられます。

家庭の場合も第三者の意見を聞くことで、自分の感情を整理しやすくなるでしょう。

監修医師コメント
尾内 隆志
尾内 隆志

辛い気持ちを誰かに話すことで、視点が切り替えられる場合があります。

不機嫌の理由が自分にあるのではないかと思い込んでいるのなら、第三者の意見を聞くことで違った考えを取り入れることができ、心理的負担が軽減されることがあるでしょう。

不機嫌を表に出す人に考えられる精神的疾患について

不機嫌を態度に出す人の中には心理的な背景として精神的な疾患が関係していることがあります。

代表的なものとして、境界性パーソナリティ障害・双極性障害・強迫性障害が挙げられます。

各疾患の特徴を理解することで、無理に自分を責めず適切に接するヒントを得られることでしょう。

境界性パーソナリティ障害

境界性パーソナリティ障害の特徴は、感情の不安定さです。

人間関係で強い不安や恐怖を感じると、些細なことで怒りや不機嫌な態度を表に出すことがあります。

相手の些細な言動を過剰に受け止めると感情が急激に変化するため、周囲は振り回されやすいです。

本人は意図的に不機嫌になっているわけではなく、感情をコントロールする力が弱まっている状態です。

対応する際は冷静に境界線を保ちつつ、感情に引き込まれない姿勢が重要です。

双極性障害

双極性障害は気分が極端に高揚する躁状態と、落ち込む抑うつ状態が交互に現れる精神的疾患です。

躁状態では短気や攻撃的な態度が表れやすく、抑うつ状態では逆に無口で不機嫌そうな態度を取りがちです。

周囲から見ると、予測できない感情の変化に振り回される状況となります。

本人も自覚がある場合とない場合があり、病気による症状として理解することが重要です。

適切な治療と環境調整によって、症状のコントロールが可能となる場合もあります。

強迫性障害

強迫性障害は過剰なこだわりや完璧主義、ルールに従う強い欲求によって不機嫌な態度が現れることがあります。

予定やその時の環境自体が思い通りにならない場合にイライラや怒りを表しやすいでしょう。

そのため、周囲からは些細なことで機嫌が悪くなると思われることが多いです。

監修医師コメント
尾内 隆志
尾内 隆志

強迫性障害の場合、本人は強迫観念に囚われており、意図的に不機嫌を出しているわけではありません。

接する際は行動やルールに過剰に巻き込まれないよう距離を保ちつつ、冷静に対応することが大切です。

不機嫌表に出す人のよくある質問・Q&A

フキハラとモラハラの違いは何ですか?

フキハラ(不機嫌ハラスメント)は上司や同僚、態度や表情で相手を萎縮させる行為です。
ため息や冷たい視線など、言葉に出さず不快感を与えます。
一方でモラハラは言葉や言動で相手の人格や尊厳を傷つけ、精神的に追い込む行為で計画的かつ持続的です。
フキハラはその場の感情の変化が中心、モラハラは意図的な支配やコントロールが特徴なので性質は大きく異なります。

母親が不機嫌を表に出す人の場合はどのような対処をすればいいですか?

母親の不機嫌を無理に受け止めようとする必要はありません。
自分の心の安全と幸せを最優先に考えましょう。
信頼できる人がいるなら相談することで心に余裕が生まれ、冷静に対処できるようになります。

不機嫌を表に出す人にやってはいけない対応はありますか?

感情的に反応したり責めたりするのは逆効果です
また、無理に機嫌を取る行為も相手の行動を強化することにつながります。
しかし、放置して距離を取りすぎるのも関係性悪化の要因となります。
冷静に対応し、必要に応じて信頼できる人に相談することが最適の対処法です。

この記事の監修

ーごあいさつー

葛飾橋病院は昭和32年の開院以来、地域の皆様や多くの病院の方々にご協力をいただき、半世紀をこえる歴史を重ねてまいりました。
当コラム記事ではさまざまな心の病を持っている方のお手伝いができればと考えています。

  • 平成12年4月〜平成13年5月 東京大学医学部附属病院 精神神経科
  • 平成13年6月〜平成15年5月 財団法人 金森和心会 針生々丘病院 精神科
  • 平成15年6月〜平成17年5月 医療法人社団 柏水会 初石病院 精神科
  • 平成17年6月〜平成18年12月 医療法人社団 健仁会 手賀沼病院 精神科
  • 平成19年1月〜 医療法人遮断 一秀会 葛飾橋病院 理事長
  • 精神保健指定医
  • 認定精神科医
  • 日本精神神経学会専門医
  • 日本医師会認定産業医
  • 日本医師会会員
  • 日本精神科病院協会 会員
  • 東京精神科病院協会 会員
  • 東京都病院協会 会員
  • ル・ソラリオン葛飾非常勤(嘱託)医師