身近に平気で嘘を付く人がいると、会話のたびに不信感が生まれ、精神的な負担が蓄積しやすくなります。
嘘を指摘しても改善されない状況が続くと、人間関係そのものが疲れの原因になり、相手との距離感に迷いが生じることもあるでしょう。
嘘をつく行動には、注目を求める気持ちや自己防衛など、明確な心理的背景が存在します。
さらに育ちや障害が影響する場合もあり、単なる性格の問題ではないケースも見られます。
本記事では、嘘を平気でつく人の特徴や心理・背景要因・適切な対処法までを体系的に解説します。
平気で嘘をつく人の特徴・心理

平気で嘘をつく人には、行動の裏に共通した傾向が見られます。
相手をだます意図がない場合でも、場面に応じて話を盛ったり、自分を守るために事実を歪めたりする場面が多くなります。
嘘が習慣化した背景には強い承認欲求や不安感が潜むこともあり、性格だけでは説明できないケースもあります。
嘘を繰り返す心理を理解することで、冷静な距離感の取り方が判断しやすくなります。
周りの注目を集めたい

周囲から注目を集めたい気持ちが強い人は、関心を引くために話を誇張したり、事実とは異なる内容を語ったりする傾向があります。
本人は悪意を持っていないつもりでも、注目されることで安心感を得たい心理が働き、気付かないうちに嘘が増えてしまう場合があります。
過去に承認を得られない経験が続いていた人ほど注目を得る行動に依存しやすく、話の内容が極端になりやすいことも特徴です。
周囲を驚かせたい気持ちや評価を高めたい願望が先行すると、事実よりも刺激の強い内容を優先してしまい、後で矛盾が生じても責任を取れない状態に陥ります。
このような特徴を持つ人は、注目を得る機会が減ると不安が高まりやすく、嘘が習慣化しやすいでしょう。
無責任で自己中心的

無責任で自己中心的な傾向を持つ人は、状況を自分にとって都合よく進めるために嘘を使う場面が多くなります。
責任を負いたくない気持ちが強く、失敗や不都合を避ける目的で事実を捻じ曲げることもあります。
周囲への配慮が乏しいため、嘘によって誰が困るのかを深く考えないまま行動してしまい、後になってトラブルを招くことも珍しくありません。
自分だけが不利益を被りたくない気持ちが先行し、言い訳としての嘘を積み重ねるケースも見られます。
また、他社の立場を想像する力が乏しい場合、嘘の影響を理解できず、同じ行動を繰り返します。
自己中心性が強い人は感情が刺激されると衝動的に嘘を口にしやすく、行動の一貫性も保ちにくくなるのが特徴です。
周囲の人を信用しない

周囲への不信感が強い人は、他者を完全に信用できない不安を抱えているため、事実を素直に伝えるよりも嘘を選ぶ傾向があります。
疑いの気持ちが強いと、正直に話すことで損をしたり攻撃されたりするイメージが浮かびやすく、自分を守るための防衛反応として嘘が習慣化しやすくなります。
また、過去の対人トラブルや家庭環境が影響し、人を信じる経験が十分に積めなかった場合も同じ行動が続くことがあります。
周囲への不信感が強い状態では、相手の善意をうまく受け取れず、些細な言動を悪意として受け取る場面も生まれます。
このような心理が続くと嘘をつく行動を正当化しやすくなり、事実と異なる話が増えやすくなります。

本人はトラブル回避のつもりでも、疑いの気持ちと防衛的な姿勢が人間関係の不調を招く要因となるため、周囲との信頼関係を築くことは非常に困難となるでしょう。
そもそも思いやりの気持ちがない

思いやりの気持ちが乏しい人は、相手の立場や感情を想像することが苦手で、嘘によって周囲がどのような影響を受けるかを深く考えられない傾向にあります。
相手の困りごとや不快感に意識が向きづらいため、自分の欲求を満たすために嘘を躊躇なく使うことが多く、責任を感じる場面も少なくなります。
また、他者への共感が弱い場合、相手の反応を見ても問題の大きさに気づきにくく、同じ行動が繰り返されることも特徴です。
思いやりの欠如は性格だけでなく、生育環境や学習経験が影響して形成されることもあり、本人に悪意がないケースも存在します。
しかし、共感の不足が嘘の頻度を高める要因となるため、人間関係で摩擦が起こりやすく、周囲の信頼を失う流れが生まれやすいです。
平気で嘘をつく人と障害や病気の関連性

平気で嘘をつく行動には、性格や習慣だけでなく精神的な背景や障害が関係する場合もあります。
嘘の内容や頻度が日常生活に影響を及ぼす場合、単なる悪癖として片付けるのは難しいです。
代表的なものとして精神疾患であるパーソナリティ障害・虚偽性障害・発達障害などが疑われる場合は、医師による診察と治療が必要となるでしょう。
虚言癖の可能性
平気で嘘をつく行動が習慣化している場合は虚言癖の可能性が考えられます。
虚言癖は本人が意識的に騙そうとしているわけではなく、無意識に嘘をついてしまう特徴があります。
嘘をつくことで承認欲求や自己防衛の欲求を満たし、現実の自分と理想の自分を補完する手段として機能することもあります。
虚言癖は生活や人間関係に影響を及ぼす場合があり、信頼関係が崩れたり、仕事や家庭で誤解が生まれたりすることもあり、人間関係に悪影響を及ぼします。

虚言癖は本人自身が嘘と現実の区別に混乱するケースも有り、指摘や注意が逆効果となりやすい点も特徴です。
周囲が適切に距離を取りつつ、安定した環境を提供することで嘘の頻度を抑えられることがあります。
虚言癖が疑われる障害・病気
平気で嘘をつく行動には、単なるクセだけでなく特定の障害や病気が関係することもあります。
虚言癖が疑われる代表的なものとして、パーソナリティ障害・虚偽性障害・発達障害が挙げられ、心理的背景と絡む場合もあります。
以下で詳しく解説します。
パーソナリティ障害
平気で嘘をつく行動は、パーソナリティ障害の特徴のひとつです。
特に自己愛性パーソナリティ障害や反社会性パーソナリティ障害では、自己中心的な行動や他者の感情を軽視する傾向があり、自分を良く見せるためや利益を得るために嘘をつくことが習慣化しやすいでしょう。
本人は嘘の行為に罪悪感を持たない場合が多く、周囲から注意されても反省する様子が少ないことが特徴です。
また、他者との信頼関係よりも自己保身や目的達成を優先するため、嘘をつく行動が繰り返されやすくなります。
このような傾向は自身の性格だけでなく、幼少期の育ちや環境が影響して形成されることもあり、無理に直そうとしても改善が難しい場合があります。
虚偽性障害
虚偽性障害は、事実とは異なる話を作り上げてしまう傾向が強く出る心の不調で、本人の中で「現実の出来事」と「頭の中で作られた物語」との境界が曖昧になりやすい状態となっています。
利益を得るための作為的な嘘というよりは、自分を守ろうとする無意識の反応として嘘をつくケースが多いと言われています。
そのため、語られた内容が実際の出来事と大きく食い違っていることも珍しくありません。
虚偽性障害による言動は、家庭や職場で誤解を生み出しやすく、対人トラブルに発展することもあります。
悪意がない場合でも話が積み重なるほどに信用が薄れ、孤立を招くおそれが出てきます。

虚偽性障害の背景には、精神的ストレスや育ってきた環境、過去の経験などが関わっていることもあるため、早い段階で専門家に相談し、状態を把握することが大切です。
周囲の人は強く避難するのではなく、落ち着いた態度で向き合う姿勢が求められます。
発達障害
平気で嘘をつく行動は、発達障害の特徴として現れる場合もあります。
特に自閉スペクトラム症や注意欠如・多動性障害の場合、社会的なルールや相手の気持ちを正確に読み取ることそのものが難しいことが背景にあります。
その結果、本人には嘘をつく意図がなくても、誤解を避けたり場を収めたりするために事実を歪めるケースが見られます。
本人は自分の行動が周囲に与える影響を理解しにくく、結果的に嘘が習慣化することもあります。
また、環境や注意のコントロールが不安定な場合、嘘の頻度が増すことも珍しくありません。
発達障害に伴う嘘は、悪意ではなく適応行動の一環として表れることが多く、周囲は過剰に攻めるのではなく、理解と支援を意識した接し方を心がけることが望ましいです。
育ちが平気で嘘をつく人に与える影響

平気で嘘をつく行動は、幼少期の育ちや家庭環境の影響を受けることがあります。
親が嘘をつく姿を日常的に目にしたり、過度な期待や愛情不足の中で育ったりすると、嘘をつくことが自己防衛や問題回避の手段として学習されやすいです。
このような背景を理解することで行動の根本的な心理を把握しやすくなり、対応方法の判断にも役立ちます。
親が平気で嘘をつく姿を見て育った
幼少期に親が平気で嘘をつく姿を日常的に見て育った場合、子どもはその行動を自然な対処法として学習する傾向にあります。
親が嘘で問題を回避したり、自分を良く見せたりする場面を目にすると、子どもは同じ方法で自分を守ることを覚えやすくなります。
また、親の嘘が家庭内で状態化していると、正直に話すことよりも嘘でやり過ごすことが効率的だと感じる心理が形成されることもあります。
その結果、自己防衛や注目を集める手段として無意識に嘘をつく行動が習慣化しやすくなります。

周囲からの注意や指摘を受けても、親の影響で嘘をつくことが正しい手段だと認識しているため、行動の改善には時間や支援が必要となる場合が多いでしょう。
親の愛情が乏しい・過度に期待されて育った
親の愛情が十分でない環境や、過度な期待をかけられて育った場合、子どもは自分を守るために嘘をつくことを覚えやすくなります。
愛情不足の中では嘘をつくことで親の関心を引き、安心感を得ようとする心理が働きます。
また、過剰な期待に応えられない不安から、嘘を使って失敗や評価の低下を回避する行動が習慣化することもあります。
こうした環境で育った人は、嘘が自己防衛の手段として無意識に機能し、感情の安定や人間関係の維持に役立つと認識しやすくなります。
そのため、嘘を否定するだけでは改善が難しく、安心できる関係や信頼できる環境を整えることが行動の変化につながりやすくなるでしょう。
関連記事 ▶ 不機嫌を表に出す人の心理|職場や家族の人間関係や対処法についても解説
平気で嘘をつく人への対処法
平気で嘘をつく人と接する際は、感情的に反応せず冷静な距離感を保つことが重要です。
嘘に振り回されるとストレスが蓄積し、対人関係が悪化しやすくなります。
また、嘘を否定するだけでは関係改善が難しい場合があるため、状況を客観的に観察し、適切な方法で対応することがポイントです。
複数人で話を聞く
平気で嘘をつく人の話を一対一で受け止めると、感情的に巻き込まれやすく、真実と嘘の判断が難しくなることがあります。
嘘を平気でつく人の話はできるだけ複数人で話を聞くことで、情報の偏りや誤解を防ぎやすくなります。
複数の視点から状況を把握すれば嘘の可能性が高い部分や事実を客観的に整理しやすいですし、感情的に反応せずに対処する助けにもなります。
複数人で状況を共有することで、職場や家庭での信頼関係を保ちながら問題を把握しやすくなり、嘘に振り回されるリスクを減らせます。
事実確認や対応方針を考えるうえで、複数人で話を聞くことは有効な手段です。
嘘だと感じたら上手く受け流す
平気で嘘をつく人と接する際、すぐに指摘や反論をすると対立が生まれ、関係が悪化しやすいでしょう。
衝突を避けつつ嘘に振り回されないようにするには、嘘だと感じても冷静に受け流す姿勢が重要となります。
嘘の内容をすべて正す必要はなく、相手の話に過度に反応せず、聞き流すことで精神的な負担を減らせます。
また、受け流すことを覚えることで自分のペースで行動することも可能となります。
さらに嘘に感情的に反応しないことで、相手が嘘をつく習慣に影響されにくくなり、冷静に距離感を保ちながら関わることができます。
職場や家庭でも、適度な距離感を意識して受け流す対応が効果的です。
相手とのコミュニケーションを工夫する
平気で嘘をつく人に対して、直接「嘘はやめて」と伝えるだけでは逆に防衛的になって嘘を重ねる可能性があります。
そのため、コミュニケーションの方法を工夫することが重要です。
「本当のことが知りたいから教えてほしい」といった言い方で、相手の行動を責めずに情報を引き出す工夫が有効です。
また、質問を具体的にし、事実に基づくやり取りを心がければ誤解やトラブルを減らせます。

嘘を指摘する際も感情的にならず、冷静に事実確認を行う姿勢を示すことが信頼関係を損なわずに対応するポイントとなるでしょう。
虚言癖で悩んでいるなら医療機関の受診がおすすめ
平気で嘘をつく行動が日常生活に支障をきたし、自分や周囲が困っている場合は、精神科や心療内科での受診が有効です。
受診時には、いつからどのような嘘をつくのか、日常生活にどの程度支障があるかを具体的に伝えることで、医師が状況を正確に把握できます。
また、虚言癖は性格だけでなく、心理的背景や障害が関係していることもあるため、専門家による評価と適切な支援が改善や対処には必要不可欠です。
受診することで自己判断だけでは難しい嘘の習慣や心理的負担を理解し、適切な対応策や治療方針を知ることができます。
平気で嘘をつく人のよくある質問・Q&A
平気で嘘をつく人の末路はどうなりますか?
職場では評価が下がったり、家庭や友人との関係が希薄になったりすることもあります。
長期的には対人関係の摩擦や心理的な負担が蓄積し、精神的に不安になることも考えられます。
自分の都合のいいように嘘をつく人はどんな心理ですか?
自分を良く見せたい、評価を保ちたい、他者の関心を引きたいといった欲求が背景にあります。
また、失敗や批判を避けるために嘘を使う場合もあり、無意識のうち習慣化しやすいでしょう。
サイコパスは平気で嘘をつくことがありますか?
彼らは罪悪感や共感が薄く、目的達成のために事実を歪めることをためらいません。
嘘は自分の利益や他者のコントロール手段として用いることが多く、周囲の感情や信頼を考慮せず行動する点が特徴です。
ただし、すべての嘘つきがサイコパスというわけではなく、人格・心理状態・育ちの背景など複数の要因が影響することを理解しておきましょう。
この記事の監修
ーごあいさつー
葛飾橋病院は昭和32年の開院以来、地域の皆様や多くの病院の方々にご協力をいただき、半世紀をこえる歴史を重ねてまいりました。
当コラム記事ではさまざまな心の病を持っている方のお手伝いができればと考えています。
- 平成12年4月〜平成13年5月 東京大学医学部附属病院 精神神経科
- 平成13年6月〜平成15年5月 財団法人 金森和心会 針生々丘病院 精神科
- 平成15年6月〜平成17年5月 医療法人社団 柏水会 初石病院 精神科
- 平成17年6月〜平成18年12月 医療法人社団 健仁会 手賀沼病院 精神科
- 平成19年1月〜 医療法人遮断 一秀会 葛飾橋病院 理事長
- 精神保健指定医
- 認定精神科医
- 日本精神神経学会専門医
- 日本医師会認定産業医
- 日本医師会会員
- 日本精神科病院協会 会員
- 東京精神科病院協会 会員
- 東京都病院協会 会員
- ル・ソラリオン葛飾非常勤(嘱託)医師


