起こってもいないことに不安になる原因は?対処法や受診の目安も解説

日常の中で、漠然とした不安や心配事が頭から離れず、辛さを感じることがある方もいるでしょう。

万が一、こんなことが起こってしまってらどうしよう・・・

未来への不安を考えてしまって、夜も眠れない・・・


先々のことに対して最悪の事態ばかり頭に浮かび、日常生活に支障をきたす人も。

そこで本記事では、起こってもいないことにどうして不安を感じてしまうのか、その原因について詳しく解説していきます。

また、不安を和らげるための対処法や、病気の可能性、受診の目安についても解説します。

起こってもいないことに不安になる原因

私たちは危険から身を守るため、未来に起きるあらゆる可能性を予測し、リスクを回避しようと考えます。

これは元々備わっている「本能」のようなもので、生きていくために必要な機能です。

しかし、この本能的な機能が過剰に働くと、起こってもいないことに対する不安が大きくなっていきます。

この章では、起こってもいないことに不安になってしまう原因が何なのか、詳しくみていきましょう。

元々の性格が心配性

元々心配性の人は、まだ起こってもいないことに対して不安を感じやすいという傾向があります。

心配性の人は行動する前から最悪の事態を考え、過剰に意識することが癖になっている場合があります。

その癖のせいで、日常の小さなことにも不安を感じ、行動することがためらわれてしまうのです。

「石橋を叩いて渡る」のではなく、「石橋を叩くだけ叩いて結局渡れない」といった状況に陥る場合があります。

ストレスが溜まっている

過剰なストレスも、未来への不安を感じやすくする大きな原因です。

一見関係ないように思えますが、ストレスが溜まるとネガティブになりやすく、起こってもいない未来のことに対して過剰に不安を感じるようになります。

さらに、その過剰な不安が新たなストレスとなり、積み重なったストレスによって心身を壊してしまうリスクもあります。

自律神経の乱れ

起こってもいないことに過剰に不安を感じるのは、自律神経の乱れも関係しています。

自律神経には、心拍や呼吸、消化、体温調節など、体の基本的な機能をコントロールする大切な役割があります。

また、自律神経にはアクセルのような役割を持つ「交感神経」と、ブレーキのようなよく割を持つ「副交感神経」があり、この二つのバランスがとても重要です。


自律神経が乱れると「交感神経」が優位になり、突然強い不安感や動悸、息苦しさ、めまいなどを引き起こす場合もあります。

完璧主義の性格

完璧主義の性格の人は、起こってもいないことに対して不安感を持ちやすい傾向があります。

完璧主義の性格の人の思考パターンとして、計画通りに物事が進まないと不安になりやすいというものがあります。

小さなミスや予定外の出来事が起きた時、それを大きな問題として捉えてしまいがちです。

「完璧にできなかったらどうしよう」「万が一ミスしてしまったら・・・」と、まだ起きていない未来に対して不安を強く感じやすいという特徴があります。

過去のトラウマを克服できていない

過去のトラウマを克服できず、まだ起こっていない出来事に対して強い不安感を感じることも。

過去の失敗や困難が強く心に残ってしまい、「また同じことが起きるかもしれない」「また同じようなことになったらどうしよう・・・」と、過剰に不安を感じてしまうのです。

ネガティブな思考が癖になると、さらに不安を助長させ、負のループに陥ってしまうこともあります。

起こってもいないことに不安になる場合の考えられる障害

起こってもいないことに不安を感じることが続き、生活にまで支障をきたすことがあります。

実はそのような場合、精神的な障害が潜んでいることがあります。

この章では、起こってもいないことに過剰に不安を覚えてしまう場合に考えられる障害について詳しくみていきましょう。

パニック障害

パニック障害とは、突然理由もなく強い不安や恐怖感に襲われる「パニック発作」を繰り返す障害のこと。

息苦しさやめまい、発汗や震えといった身体症状を伴い、「このまま死んでしまうのではないか」という恐怖に襲われる精神疾患です。

また、発作が再び起きるのではないかという「予期不安」や、電車やバス、人混みなどのすぐにその場から離れるのが難しい特定の場所を避けるようになる、「広場恐怖」を伴うこともあります。 

これらの症状は直接命に関わることはありませんが、非常に強い不安体験となり、日常生活に支障をきたします。

パニック障害を引き起こす原因としては、

  • 心理的な要因
  • 脳内物質のバランスの乱れ
  • 遺伝的要因

などが考えられます。

治療には薬物療法と認知行動療法を組み合わせることが一般的で、早期治療が効果的とされています。

強迫性障害

強迫性障害とは、「強迫観念」と「強迫行為」を繰り返すことが特徴の精神疾患です。

「強迫観念」とは、不安や恐怖を引き起こす考えやイメージが繰り返し頭に浮かんで離れない状態のこと。

例えば、「家の鍵をかけ忘れたかもしれない」と過剰に不安を感じるようなことをいいます。

強迫行為は、その不安を和らげるため、何度も繰り返し確認をするような状態のことです。

本人も過剰な行動であることを自覚していることが多いですが、不安を抑えるためにどうしてもやめられないのが特徴です。

強迫性障害を引き起こす原因としては、

  • 心理的要因
  • 遺伝的要因
  • セロトニンの働きの異常
  • 脳機能の異常      

などが考えられます。

監修医師コメント
尾内 隆志
尾内 隆志

強迫性障害の治療には薬物療法と認知行動療法を併用することが多く、家族や周囲の人の理解とサポートも重要なため、家族へも心理教育を行うことがあります。

社会不安障害

社会不安障害とは、人に見られる場面で強い不安や恐怖を感じる精神疾患のことです。

人前に出る社会的な場面で強い不安を感じ、顔の赤みや発汗、声の震え、動悸といった症状が現れます。

さらに、他人からの評価が気になって頭から離れず、その場面を避けようとする「回避行動」も伴います。

この「回避行動」が続くと、日常生活に支障をきたしてしまいます。

社会不安障害は「あがり症」や「赤面症」なども一部含まれますが、内向的な性格として簡単に片づけられるものではありません。

社会不安障害を引き起こす原因としては、

  • 脳内物質(セロトニン)の異常
  • 自律神経の乱れ
  • 遺伝的要因
  • 過去のトラウマ

などが考えられます。

社会不安障害の治療は、認知行動療法で不安を和らげる方法を身につけることや、抗うつ剤等を使った薬物療法を併用することが一般的です。

全般性不安障害

全般性不安障害とは、日々の生活の中のさまざまな出来事に対し、過度な不安や心配が半年以上続く精神疾患です。

特定の対象に限らず、日々の何気ないことにも常に不安を感じてしまうのが特徴です。

集中力の低下、落ち着きのなさ、イライラ、疲労感、頭痛、動悸、睡眠障害、筋肉の緊張など、身体的な症状を伴うことも。

全般性不安障害を引き起こす原因としては、

  • 遺伝的要因
  • 過度なストレス
  • 脳内物質のバランスの乱れ

などが考えられます。

全般性不安障害の治療には、認知行動療法や抗うつ剤・抗不安薬などを使用した薬物療法との併用が一般的です。

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起こってもいないことに不安になるときの対処法

起こってもいないことに不安を感じるとき、まずは心と体をリラックスさせることを心がけましょう。

この章では、すぐに実践できる対処法を4つご紹介します。

この対処法を習慣化することで、思考パターンに少しずつ変化が現れ、不安感が安らぐ効果が期待できます。

信頼できる身近な人に話を聞いてもらう

起こってもいないことに不安を感じやすい人は、その不安を一人で抱え込んでしまう傾向があります。

不安を感じた時、信頼できる身近な人に話を聞いてもらうことは、不安を和らげるのに非常に効果的です。

人は誰かに話をすることで、混乱した感情や不安が整理され、自分でも気づかなかった不安が明確になることがあります。

無意識に抱えていた不安に気づくことで、心が軽くなります。

信頼できる身近な人に、自分の気持ちを声に出して表現してみましょう。

不安を紙に書き出して整理する

頭の中にある不安や恐怖を、思いのまま紙に書き出すのもおすすめです。

最近では、特定の時間内に頭に浮かんだ感情や考えを紙に書き出す「ジャーナリング」が人気です。

ジャーナリングは「書く瞑想」とも言われ、感情や思考を整理し、自己理解を深めるマインドフルネスの一種です。

ノートや手帳などに今感じている不安を、具体的に心に思い浮かんだまま、細かく書いてみましょう。

誰かに見せるものではないので、思ったことをそのまま、率直に書くのがポイントです。

自分で書いた不安を読み返すことで客観的に思考を整理することができ、不安の解消に非常に効果的です。

明るい自分を思い描く

不安を感じる状況になった時、ポジティブなイメージを思い浮かべてみましょう。

どんなに小さなことでも、過去の成功体験を思い浮かべ、成功している自分を思い描きます

明るい自分を思い描くことは、自己肯定感を高め、「自分ならできるかもしれない」「自分ならきっとできる」という感覚を取り戻すのに役立ちます。


何か特定の状況に対して不安を感じたら、「似たような状況で乗り越えられた経験」や「目標を達成できた経験」など、具体的な成功体験を紙に書き出してみましょう。

また、実際に経験したことでなくても、ポジティブな結果や自分が成功している姿を具体的にイメージし、実際に起こったことのように紙に書いてみるのもおすすめです。


明るい未来を具体的にイメージすることで、ポジティブな思考の癖が着くようになります。

生活リズムを整える

生活リズムを整えることは、心の健康のために非常に大切です。

特に大切なのが、「睡眠」「食事」「運動」の3つです。

心のバランスを整える睡眠
  • 睡眠時間は6〜8時間取るようにする
  • なるべく決まった時間に布団に入る
  • 朝起きたら陽の光を浴びる など

睡眠は、心身の疲労回復やストレス解消にとても大切です。

質の良い睡眠を取るためには、寝室の環境を整えたり、寝る前の軽いストレッチを行うのもおすすめです。

心のバランスを整える食事
  • 栄養バランスの取れた食事
  • なるべく決まった時間に食事を摂る
  • ジャンクフードはなるべく避ける   など

特にビタミンB群(ナッツ・緑黄色野菜・納豆・豚肉など)は、ストレス軽減、ミネラル(乳製品・小魚・大豆製品・海藻など)は神経の機能を安定させる効果が期待できます。

また、緑茶や紅茶にはリラックス効果もあるため、休憩時間などに取り入れてみましょう。

心のバランスを整える運動
  • ヨガ
  • ウォーキング
  • ストレッチ  など

心のバランスを整えるためには、軽い運動を習慣化するのがおすすめです。

監修医師コメント
尾内 隆志
尾内 隆志

軽い運動はストレスホルモンの分泌を抑え、自律神経を整える効果があります。

心地良いと感じる程度で、ゆったりとした呼吸を意識して行うことで、副交感神経が優位になり、リラックス効果を高めることができます。

起こってもいないことに不安になるときの受診の目安

強い不安感がある時は、一人で抱え込まずに専門家に相談するのがおすすめです。

不安感があるけど、受診した方が良いのかな・・・

心配性なだけなのか、受診すべきなのかわからない

このように、受診すべきかどうか自分では判断がつかず、悩んでいる人も多いと思います。

この章では、受診の目安となる症状についてみていきましょう。

受診が必要なサイン

これから解説する症状に当てはまる場合は、専門家のサポートが必要となる場合が多いです。

受診の目安となるサインは以下の通りです。

  • 不安感が長期間続いている場合
  • 毎日のように不安感がある場合
  • 不安感によって日常生活に支障をきたしている場合
  • 身体的不調が出ている場合
  • 人間関係に支障をきたしている場合
  • 対処法を試しても効果が現れず、不安感が悪化している場合
  • 不安感によってアルコールやギャンブル等に依存している場合
  • 「死んでしまいたい」「消えてしまいたい」といった感情が繰り返し起こる場合  など

慢性的な不安感がある場合や、不安感によって「仕事や学校に行くのが辛い」「人と会うのが辛い」など、日常生活に支障が出る場合は、専門家の介入が必要です。

また、不安感が大きくなると、体の不調として現れるケースも少なくありません。

  • 眠れない
  • 食欲がない
  • 倦怠感
  • 動悸
  • 頭痛
  • 息苦しさ
  • 胃腸の不調
  • めまい  など

このような症状で内科等を受診しても異常が見られない場合、精神科や心療内科を思い切って受診してみましょう。

早期に適切な治療やサポートを受けることができれば、症状の改善が期待できます。

心療内科・精神科のアプローチ法の例

心療内科や精神科と聞くと少し戸惑ってしまう人もいるかもしれません。

しかし、心の不調は誰にでも起こる可能性があり、早期発見と早期治療が回復への近道となります。

体調が悪い時に原因を知るため内科に行くのと同じように、心身のバランスが崩れたら専門家に相談するのは自然なことです。

また、起こってもいないことへの不安やそれに伴う症状に対しては、さまざまなアプローチ方法があります。

この章では、どのようなアプローチ方法があるのかについてみていきましょう。

薬物療法

不安感に伴いさまざまな不調が現れた場合、お薬を使った治療を行います。

不安感を軽減する「抗不安薬」や、脳内の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリンなど)のバランスを整える「抗うつ剤」などを使用し、気分の落ち込みや意欲低下などの症状の改善を目指します。


薬に抵抗があるという人もいるかもしれませんが、症状を一時的に和らげるのに効果的な治療方法です。

薬の種類や副作用について、心配なことがあれば医師に相談してみましょう。

精神療法(心理療法)

精神療法(心理療法)とは、専門家がカウンセリングを通して心の健康の維持・回復をサポートする治療法です。

「精神分析療法」「クライエント中心療法」「認知行動療法」などがあり、特に「認知行動療法」は、不安障害やその他の精神疾患に非常に有効とされています。

認知行動療法とは、不安を感じる引き金となっている「思考」や「行動」を特定・修正し、悪循環を断ち切るための治療法です。

監修医師コメント
尾内 隆志
尾内 隆志

不安を感じるのはどのような場面で、どのような行動で、どのような考えや感情によって引き起こされているのかを知り、専門家のサポートのもと、バランスの取れた考え方に修正していきます。

生活指導

また、医師やカウンセラーによる生活指導を受け、生活習慣を見直すことも立派な治療法のひとつです。

主な生活指導のポイントは以下のとおりです。

  • 十分な休息の確保
  • 規則正しい生活習慣の維持
  • ストレス対処法(リラクゼーション法)
  • 適度な運動   など

また、治療には周囲の理解やサポートもとても重要です。

そのため、家族へのサポート指導が行われることもあります。

起こってもいないことに不安になるのよくある質問・Q&A

恋愛において勝手に想像して不安になる原因は何ですか?

過去の恋愛や経験において、失敗だったと感じることや、トラウマに感じていることがあると、「今回も同じようになるのではないか・・・」と勝手に想像して不安になってしまうことがあります。
過去の恋愛と今回の恋愛は別物であると認識することで、不安感を軽減できる場合があります。
不安に感じることがある時は、なぜ自分が不安に感じるのか、ノートなどに書き出してみると考えを整理できるかもしれません。

起きてもいないことを心配するときに不安を取り除く言葉はありますか?

起きてもいないことを心配して不安になるのは、ネガティブな未来を想像してしまうことが原因のひとつ。
不安を取り除くには、「なんとかなる」「まあいっか」と楽観的になることも大切です。
また、「自分はできる」「きっと大丈夫」など、肯定的な言葉を自分にかけてあげましょう。

心配事の9割は起こらないというのは本当ですか?

心配事の9割は起こらないというのは、科学的な裏付けのある言葉です。
ミシガン大学・ペンシルバニア大学の研究では、 心配事の80~85%は実際は起こらないという結果があります。
また、残りの20%のうちの16%は、事前に準備をすれば対処可能であるとされ、その結果実際に起こるのは4~5%程度だといわれています。

この記事の監修

ーごあいさつー

葛飾橋病院は昭和32年の開院以来、地域の皆様や多くの病院の方々にご協力をいただき、半世紀をこえる歴史を重ねてまいりました。
当コラム記事ではさまざまな心の病を持っている方のお手伝いができればと考えています。

  • 平成12年4月〜平成13年5月 東京大学医学部附属病院 精神神経科
  • 平成13年6月〜平成15年5月 財団法人 金森和心会 針生々丘病院 精神科
  • 平成15年6月〜平成17年5月 医療法人社団 柏水会 初石病院 精神科
  • 平成17年6月〜平成18年12月 医療法人社団 健仁会 手賀沼病院 精神科
  • 平成19年1月〜 医療法人遮断 一秀会 葛飾橋病院 理事長
  • 精神保健指定医
  • 認定精神科医
  • 日本精神神経学会専門医
  • 日本医師会認定産業医
  • 日本医師会会員
  • 日本精神科病院協会 会員
  • 東京精神科病院協会 会員
  • 東京都病院協会 会員
  • ル・ソラリオン葛飾非常勤(嘱託)医師