不安型愛着障害の特徴❘原因と接し方について解説

不安型愛着障害は、人間関係に強い不安を抱きやすく、相手の言動に過敏に反応してしまう傾向がある愛着スタイルです。

幼少期の親子関係や環境が原因となることが多く、自己肯定感の低下や依存的な行動に繋がる場合があります。

適切な接し方を理解することで不安型愛着障害を患っている人の安心感を高め、健やかな人間関係を築くことに繋がります。

本記事では、不安型愛着障害の特徴・原因・接し方をわかりやすく解説します。

不安型愛着障害は愛着障害4タイプのひとつ

不安型愛着障害は、4つあるとされている愛着障害のひとつで、不安型(囚われ型)と呼ばれることが多いです。

不安型という名称を見ても分かるように、不安型愛着障害の人は常に強い不安に襲われていることが大きな特徴で、「見捨てられるかもしれない」と思いながら人と接しています。

たとえ親や結婚したパートナー相手であっても、見捨てられるという不安が消えることはなく、情緒が安定しません。

他者への過度な依存と束縛

不安型愛着障害を持つ人は、相手との関係が途切れることに強い恐怖を抱きやすく、結果として過度な依存や束縛に発展することがあります。

相手が少し距離を取ろうとするだけで見捨てられたと感じ、不安や焦りから過剰な連絡や要求をするといった行動を取ってしまいがちです。

本人にとっては安心を得るための正しい行動なのですが、相手からは重荷に感じられてしまい、更に距離を取られるなど関係が悪化する原因にもなりかねません。

過剰な連絡や要求といった行動は無意識に現れることも多く、不安型愛着障害を患っている本人も悩みを抱えやすい特徴です。

他者からの評価を極端に気にする

他社の言葉や態度に過敏に反応してしまうのも不安型愛着障害の特徴のひとつです。

自分が他人にどのように評価されているかを常に気にかけてしまうため、小さな否定的反応でも心の中に強く残ってしまいます。

普通の性格の人なら気にしないようなことであっても、不安型愛着障害の人は必要以上に落ちこみ、自分の存在価値そのものに疑いを持つことがあります。

一方で、褒め言葉や肯定的な態度に対しては大きく依存しやすく、相手の反応によって気分が大きく左右される傾向にあるのも不安型愛着障害の特徴のひとつです。

相手のちょっとした言動で気持ちが大きく変わることから安定した自己像を保つことが難しく、日常的に強い不安や緊張に襲われることが多いです。

承認欲求が強い

不安型愛着障害を抱える人は、自分の存在を確認して安心するために、他者からの承認を強く求める傾向があります。

「必要とされたい」「認められたい」という気持ちが人一倍強く、些細な場面でも相手からの反応を意識して行動することが多いです。

承認が得られないと不安や孤独感が増幅し、相手に対してさらに強い働きかけをしてしまうことがあります。

不安型愛着障害が求める強い承認欲求は、周囲からは依存的な態度や行動として受け取られる場合があり、本人が臨む安心感とは逆に人間関係の悪化を招いてしまう要因になる可能性もあるため注意が必要です。

自己肯定感が低い

不安型愛着障害の大きな特徴のひとつが、異常ともいえる自己肯定感の低さです。

自分自身に自信が持てず、相手にどのように思われているかに強く依存するため、自己評価を安定させることが非常に困難になります。

過去の経験や幼少期の養育環境によって「愛されていない」と感じた記憶が背景にある場合も多く、結果として「自分は価値がないのでは」という結論に至りやすいです。

不安型愛着障害の低い自己肯定感は、不安や対人関係の不安定さを強め、他者への過度な依存や承認欲求の強さにも繋がっていくとされています。

不安型愛着障害の大きな原因は「幼少期の養育環境」

不安型愛着障害の人は常に自分は気捨てられるかもしれないといった不安を感じながら生活しています。

仕事場では上司や同僚に対して、そして自宅でも恋人や家族に対して相手の顔色を常に気にしながら相手と接しているため、精神を疲弊してしまうことが多いです。

不安型愛着障害の人が見捨てられるかもしれないという強い気持ちを抱く原因は様々ですが、最も大きな原因は幼少期の養育環境にあると言われています。

幼少期の養育環境

不安型愛着障害の人は、幼少期の家庭が以下のような環境であったケースが非常に多いです。

  • 虐待やネグレクト:継続的に身体的・精神的暴力を受ける
  • 親の精神的な不安定さ:普段怒られないことでも親の気分で強く注意を受けたりする
  • 養育者の頻繁な交代:不倫などで片親が頻繁に代わったり、養育相手をたらい回しにされる
  • 養育者の無視、無関心:親からの愛情を一切与えられなかった、悩みを打ち明けても聞いてもらえなかった

子どもは成長の過程で、親から安定した愛情や安心感を得ることで自分や他者への信頼を育み、自己肯定感を高めます。

しかし、虐待やネグレクトによって基本的な欲求が満たされなかったり、親の精神的な不安定さから一貫性のない対応を受けたりすると、安心できる基盤が築かれません。

また、養育者が頻繁に交替する状況や親による無視・無関心による愛情の欠如が与える影響も非常に大きいです。

幼少期の辛い体験を積み重ねることで、見捨てられるのではないかという強い不安を抱きやすくなり、成長後の人間関係において不安型愛着障害の特徴として表れるのです。

生まれ持った気質や遺伝

不安型愛着障害の原因は幼少期の養育環境だけではなく、生まれ持った気質や遺伝的要素も関係しているといわれています。

人は生まれつき不安を感じう安い、刺激に敏感で緊張しやすいなどの気質を持つことがあります。

生まれ持っての性質は遺伝的な影響を受けることが多く、親から引き継がれるケースも多いです。

気質的に不安が強い子どもは、養育者のちょっとした反応にも過敏に反応しやすく、安心感を得にくい状態に陥りやすいです。

必ずしも気質や遺伝だけで愛着障害が起こるわけではありませんが、不安定な養育環境と重なることで、不安型愛着障害のリスクが高まる要因となります。

大人の不安型愛着障害の治し方!自分の安全基地を持つ

不安型愛着障害の修復には、不安を感じずに過ごせる状態でいられる場所や時間といった安全基地の存在が非常に重要です。

不安型愛着障害の人は幼少期に満たされなかった思いを大人になってからも引きずっています。

満たされない気持ちを補うような安全基地を見つけることで、少しずつ症状は改善されます。

また、不安型愛着障害は幼少期に十分な愛情を受けなかったことが原因となっているため、うつ病などのように薬物治療や認知療法で改善する疾患ではありません。

本章では特に有効とされる対策を3つ紹介します。

自己理解を深める

不安型愛着障害を克服する第一歩は、自分の考え方や行動パターンに気づき、自分への理解を深めることです。

人間関係で不安や依存が強まる場面を振り返り、感情が大きく揺さぶられる理由を客観的に考えることで、感情に振り回されることが大幅に減少します。

日記をつけたり、医師や専門家からのカウンセリングを受けることは自己理解を深めるため非常に有効な手段です。

信頼できる人や場所を見つける

安心して気持ちを表現できる相手や場所を持つことも、不安型愛着障害を克服するのに有効な対策のひとつです。

自分の気持ちを無条件に受け入れてくれる存在が身近にいるだけで、見捨てられるのではという不安が軽減されます。

家族・友人・専門家など信頼できる関係を築くことが、心の安定に繋がります。

信頼できる人や場所はリアルタイムでの場所である必要はなく、オンラインのサポートグループなども有効な選択肢のひとつです。

幼少期の望みを叶える

幼少期に十分満たされなかった「安心したい」「受け止めてほしい」という願いを、大人になった今の自分が積極的に満たしていくことも不安型愛着障害の克服には重要です。

例えば、自分を褒めたりご褒美を与えたりすることで、当時の心の穴を少しずつ埋めることができます。

心理療法を通じて、過去の体験を癒やして直す方法も効果的です。

不安型愛着障害の人との接し方

不安型愛着障害を持つ人は、対人関係で強い不安を抱えやすく、間違った接し方をすると相手に大きな不安を与えて人間関係が悪化することにもなりかねません。

相手を否定せず寄り添う姿勢・試し行動に対しての理解・適度な距離感を保つことが大切です。

相手を否定せずできるだけ寄り添う

不安型愛着障害の人は、自分が受け入れられているかどうかにとても敏感です。

意見や感情を頭ごなしに否定されると不安が強まり、関係が悪化しやすくなります。

接する際には「そう感じたんだね」「あなたの気持ちは理解できるよ」と、共感を示す言葉や態度を取ることで相手は安心感を得られます。

寄り添う姿勢を見せるだけでも相手は「自分は大切にされている」と実感でき、強い信頼関係を築くことが可能です。

「試し行動」と向き合う

不安型愛着障害の人は、相手に愛されているかを確認するために「試し行動」を取ることがあります。

「試し行動」とは

わざと不安を煽るような発言・行動を取ることで相手からの愛情を試す行動を指します。

例えば、わざと不安を煽るような発言をしたり、返事が遅いと「自分は嫌われたのでは」と問い詰めたりする行動を取ることがあります。

試し行動は相手を本当に困らせたいのではなく、愛情を確かめるために実行することを理解しましょう。

試し行動をされた側が冷静さを保ち必要な存在であることを伝えれば、相手の不安を和らげることができます。

適度な距離感を持つ

相手に寄り添うことは非常に大切ですが、過度に依存を許してしまうと自分自身だけではなく相手も疲弊してしまう恐れがあります。

適度な距離感を保ちつつ関係を続けることも不安型愛着障害改善には重要です。

例えば、連絡が頻繁すぎると感じた場合は、「今日は◯時までなら話せるよ」と境界線を示すことが効果的です。

相手にとっては最初は不安であっても、繰り返し安心感を伝え、伝えた通りに行動することで健全な距離感を学びやすくなります。

健全な距離感をお互いが把握すれば長期的に良好な関係を築くことができるでしょう。

不安型愛着障害に関するよくある質問

不安型愛着障害の恋愛傾向を教えてください。

不安型愛着障害の人は、恋愛関係において相手に強く依存しやすく、少しの変化にも敏感に反応します。連絡の頻度や態度から「見捨てられるのでは」と不安になり、過度に確認や束縛をする傾向があります。愛情を求める気持ちが強い一方で、相手に重荷を与えてしまうことも少なく有りません。

うつ病の人が大人の愛着障害のチェックリストはありますか?

大人の愛着障害を確認するためのチェックリストは複数存在し、専門書や心理学のサイトなどで公開されています。うつ病と愛着障害は関連することもあり、自己診断よりも臨床心理士や精神科医など専門家の診断を受けることが望ましいです。

愛着障害は大人になってから発症する場合もありますか?

愛着障害は本来、幼少期の養育環境が大きな影響を与えるとされますが、大人になってからでも強いストレスや人間関係のトラブルをきっかけにして症状が出てくることもあります。とはいえ、何もない状態から新たに発症するのではなく、潜在的に抱えていた不安定な愛着傾向がなにかのきっかけにより発症するケースが多いとされています。

この記事の監修

ーごあいさつー

葛飾橋病院は昭和32年の開院以来、地域の皆様や多くの病院の方々にご協力をいただき、半世紀をこえる歴史を重ねてまいりました。
当コラム記事ではさまざまな心の病を持っている方のお手伝いができればと考えています。

  • 平成12年4月〜平成13年5月 東京大学医学部附属病院 精神神経科
  • 平成13年6月〜平成15年5月 財団法人 金森和心会 針生々丘病院 精神科
  • 平成15年6月〜平成17年5月 医療法人社団 柏水会 初石病院 精神科
  • 平成17年6月〜平成18年12月 医療法人社団 健仁会 手賀沼病院 精神科
  • 平成19年1月〜 医療法人遮断 一秀会 葛飾橋病院 理事長
  • 精神保健指定医
  • 認定精神科医
  • 日本精神神経学会専門医
  • 日本医師会認定産業医
  • 日本医師会会員
  • 日本精神科病院協会 会員
  • 東京精神科病院協会 会員
  • 東京都病院協会 会員
  • ル・ソラリオン葛飾非常勤(嘱託)医師