コラム

【精神科医監修】不眠サプリは効果ある?50代・更年期の悩み別選び方と注意点

【精神科医監修】不眠サプリは効果ある?50代・更年期の悩み別選び方と注意点
尾内隆志 医師の顔写真

この記事の監修者

尾内 隆志(おない たかし) Takashi Onai, M.D.
  • 資格:公益社団法人 日本精神神経学会 精神科専門医
  • 所属・役職:医療法人社団 一秀会 葛飾橋病院 理事長(院長
  • 専門分野:臨床精神科医学一般、EDに伴う心理的側面
  • 医籍登録:医師免許取得:平成12年5月(医籍登録番号:409881)
学歴・職歴(要点を表示)

学歴

  • 郁文館高等学校(平成3年4月〜平成6年3月)
  • 聖マリアンナ医科大学 医学部医学科(平成6年4月〜平成12年3月)

職歴

  • 東京大学医学部附属病院 精神神経科(平成12年4月〜平成13年5月)
  • 針生ヶ丘病院 精神科(平成13年6月〜平成15年5月)
  • 初石病院 精神科(平成15年6月〜平成17年5月)
  • 手賀沼病院 精神科(平成17年6月〜平成18年12月)
  • 葛飾橋病院 理事長(平成19年1月〜現在)

理事長/院長よりご挨拶:
昭和32年の開院以来、地域の皆様に支えられ半世紀をこえる歴史を重ねてまいりました。社会や生活スタイルの変化に伴い精神医療も大きく変化しています。私たちは優しく開かれた医療をめざし、地域に根ざした活動を推進し、患者様・ご家族に安心いただけるホスピタルづくりに尽力してまいります。

監修範囲

本記事のうち、精神科医の観点が関与する記述(EDに関連する心理的側面・受診の不安軽減・受診行動に関する助言等)について、事実関係と表現の妥当性を確認しました。医学的一般情報であり、特定の診断・治療の保証を行うものではありません。

  • 利益相反:申告すべき利益相反はありません。
  • 最終更新:

結論: 睡眠サプリは、専門家の助言のもとで自身の不眠タイプに合う成分を選べば、睡眠の質を高める心強い味方になります。

薬への抵抗感がある方でも、安全なサプリの選び方と注意点を理解すれば、安心して試すことができます。

この記事を読めば、以下の3点が明確になります。

目次
  1. なぜ眠れないの?50代女性に多い不眠の4つの原因
  2. 睡眠サプリと睡眠薬(睡眠改善薬)、何が違うの?
  3. 【悩み別】あなたに合った睡眠サプリの成分はこれ!
  4. 主要な睡眠サポート成分6つの効果と仕組みを深掘り解説
  5. 【重要】後悔しない!安全な睡眠サプリの選び方3つのポイント
  6. サプリの効果的な飲み方と、やめ時はいつ?
  7. 睡眠サプリに関するよくある質問(FAQ)
  8. それでも改善しない…専門医に相談すべきサインとは
  9. まとめ:自分に合ったサプリを見つけて、心地よい眠りを取り戻しましょう
  10. 参考文献

なぜ眠れないの?50代女性に多い不眠の4つの原因

「若い頃はどこでも眠れたのに、最近はベッドに入っても目が冴えてしまう」
「夜中に何度も目が覚めて、朝から疲労感が抜けない」

50代を迎えて、このような睡眠の悩みを抱えていませんか?

実はその不調、あなただけの問題ではありません。

多くの方が同じような悩みを抱えており、その背景にはこの年代特有の心と体の変化が関係しています。

このセクションでは、なぜ眠れなくなってしまうのか、特に50代の女性に多い4つの主な原因を、専門家の視点から分かりやすく解説します。

原因を知ることで、漠然とした不安が解消され、ご自身に合った正しい対策の第一歩を踏み出すことができます。

尾内医師 (精神科専門医) のコメント

臨床の現場でも、50代前後の女性で『最近よく眠れなくて』と相談に来られる方は非常に多いです。ご自身のことを『眠れないなんて、どこかおかしいのでは』と責めてしまう方もいらっしゃいますが、そんなことはありません。まずは、年齢による体の変化が原因かもしれない、と知ることがご自身を安心させる上でとても大切ですよ。

原因①:女性ホルモンの減少(更年期)

50代女性の不眠の最大の原因として考えられるのが、更年期における女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の急激な減少です。

これらのホルモンは、妊娠や出産だけでなく、実は睡眠とも深い関わりを持っています。

エストロゲンには、セロトニンという神経伝達物質の分泌を助ける働きがあります。

セロトニンは日中の心の安定に関わるだけでなく、夜になると睡眠を促すホルモンであるメラトニンの原料になります。

そのため、エストロゲンが減少するとセロトニンの分泌も不安定になり、結果としてメラトニンが十分に作られず、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりするのです。

一方、プロゲステロンには、リラックス効果のあるGABAの働きを高める作用があることが知られています。

プロゲステロンが減少すると、このリラックス作用が弱まり、些細なことで不安を感じたり、イライラしやすくなったりして、心身が緊張状態から抜け出しにくくなります。

これも、穏やかな入眠を妨げる一因となります。

原因②:ストレスや不安による自律神経の乱れ

50代は、仕事での責任、子どもの独立、親の介護など、家庭や社会でさまざまな役割を担う年代です。

知らず知らずのうちに溜まったストレスや将来への不安は、心身のオン・オフを切り替える自律神経のバランスを大きく乱してしまいます。

自律神経には、日中に心身を活動的にする「交感神経」と、夜間に心身をリラックスさせる「副交感神経」があります。

通常、夜になると副交感神経が優位になり、心拍数や血圧が下がって自然な眠りへと誘われます。

しかし、強いストレスや不安が続くと、夜になっても交感神経が優位なままの状態が続いてしまいます。

これは、いわばアクセルペダルが踏みっぱなしの状態で、ブレーキが効かないようなものです。

頭では「眠らなければ」と思っているのに、体は興奮状態から抜け出せず、目が冴えてしまったり、眠りが浅く何度も目が覚めたり(中途覚醒)する原因となるのです。

原因③:セロトニン不足による体内時計の乱れ

原因①でも触れたセロトニンは、「幸せホルモン」とも呼ばれ、精神的な安定に不可欠な物質ですが、睡眠においては「睡眠ホルモン・メラトニン」の材料として極めて重要な役割を担っています。

このメラトニンは、私たちの体に「夜が来たから眠る時間だ」と教えてくれる、体内時計の調整役です。

セロトニンは、日中に太陽の光を浴びることで活発に生成されます。

しかし、加齢やストレス、運動不足などによってセロトニンの分泌が減少すると、夜になっても十分な量のメラトニンを生成できなくなります。

その結果、体内時計が乱れ、「夜になっても眠くならない」「朝、決まった時間に起きられない」といった症状が現れやすくなります。

特に、起床時にすっきりせず、日中もぼんやりしてしまう方は、このセロトニン不足が関係しているかもしれません。

原因④:その他(生活習慣、病気など)

更年期やストレス以外にも、睡眠の質を低下させる要因はいくつか存在します。

  • 生活習慣の乱れ:就寝前のスマートフォン操作(ブルーライト)、カフェインやアルコールの摂取、不規則な食事時間などは、脳を覚醒させ、眠りを妨げます。
  • 運動不足:日中の適度な運動は、心地よい疲労感を生み、夜の深い眠りを助けます。運動不足は、このサイクルを乱す原因となります。
  • 病気の可能性:レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)や睡眠時無呼吸症候群など、睡眠を妨げる病気が隠れていることもあります。
    いびきがひどい、夜中に息が止まっていると指摘されたことがある、足がむずむずして眠れないといった症状があれば、専門医への相談が必要です。

睡眠サプリと睡眠薬(睡眠改善薬)、何が違うの?

「薬は副作用や依存性が怖いから飲みたくない。でも、サプリなら安心?」不眠に悩む多くの方が、このような疑問をお持ちです。

このセクションでは、睡眠サプリメント、市販の睡眠改善薬、そして医師が処方する睡眠薬、それぞれの目的や成分、メリット・デメリットの違いを明確に解説します。

それぞれの立ち位置を正しく理解することで、ご自身にとって最適な選択肢を見つける手助けになります。

尾内医師 (精神科専門医) のコメント

『サプリは食品だから絶対に安全』と誤解されている方がいますが、飲み合わせや体質によっては注意が必要です。一方で、睡眠薬も医師の指導のもとで正しく使えば、過度に怖がる必要はありません。大切なのは、それぞれの違いを正しく理解し、ご自身の状態に合わせて適切に使い分けることです。

目的と役割の違い

これらは似ているようで、法律上の分類も、使用する目的も全く異なります。

  • 睡眠サプリ:法律上は「食品」に分類されます。病気の治療を目的とするものではなく、あくまでも睡眠の質を高めるための”サポート”や、健やかな眠りのための栄養補給が役割です。リラックスを助けたり、心地よい休息を促したりする成分が含まれています。
  • 睡眠改善薬(市販薬):薬局やドラッグストアで購入できる「医薬品」です。「寝つきが悪い」「眠りが浅い」といった、一時的な不眠症状を”緩和”することを目的としています。あくまで短期的な使用が前提であり、慢性的な不眠に使用するものではありません。
  • 睡眠薬(処方薬):医師の診断に基づいて処方される「医薬品」です。不眠症という”病気の治療”を目的としています。脳の働きに直接作用し、眠りを誘う効果がありますが、医師の厳格な管理下で使用する必要があります。

成分と作用の違い

目的が異なるため、含まれている中心的な成分や、それが体にどう作用するかも大きく異なります。

  • 睡眠サプリ:主成分は、GABAL-テアニングリシンといったアミノ酸や、ハーブ由来の成分など、もともと体内に存在したり、食品に含まれたりするものが中心です。
    脳の興奮を鎮めたり、心身のリラックスを促したりと、体が本来持っている休息へのプロセスを穏やかにサポートするように働きます。
  • 医薬品(睡眠改善薬・睡眠薬):睡眠改善薬の多くは、「ジフェンヒドラミン塩酸塩」という抗ヒスタミン成分が主成分です。
    これは、アレルギー症状を抑える薬の副作用である「眠気」を応用したもので、脳の覚醒を促す物質の働きをブロックすることで、眠気を誘います。処方薬である睡眠薬にはさらに多くの種類があり、より強力に脳の活動を抑制します。

メリット・デメリットの比較

それぞれの特徴を理解するために、メリットとデメリットを比較してみましょう。

▼サプリ・睡眠改善薬・睡眠薬の比較表を見る

種類睡眠サプリメント睡眠改善薬(市販薬)睡眠薬(処方薬)
分類食品要指導・第1類・第2類医薬品医療用医薬品
目的睡眠の質の向上サポート一時的な不眠症状の緩和不眠症の治療
主成分例GABA, グリシン, L-テアニンジフェンヒドラミン塩酸塩ベンゾジアゼピン系など多数
入手方法ドラッグストア, 通販など薬剤師・登録販売者のいる店舗医師の処方箋が必要
メリット・手軽に試せる
・依存性のリスクが極めて低い
・日中への影響が少ない傾向
・急な不眠に即時対応できる
・医療機関を受診せずに購入可能
・効果が強い
・不眠のタイプや原因に応じた多様な選択肢 ・医師の管理下で安全に使用可能
デメリット・効果が穏やかで個人差が大きい
・科学的根拠のレベルが医薬品とは異なる
・医薬品との飲み合わせに注意が必要
・連用は推奨されない(あくまで一時的)
・口の渇きや翌日の眠気などの副作用
・緑内障や前立腺肥大など特定の持病がある場合は使用不可
・副作用のリスク(ふらつき、記憶障害など)
・医師の厳格な指導が必須
・種類によっては依存性や耐性の可能性がある

このように、それぞれに長所と短所があります。

「手軽だから」という理由だけで選ぶのではなく、ご自身の症状の程度や期間を考慮して、最適なものを選ぶことが重要です。

【悩み別】あなたに合った睡眠サプリの成分はこれ!

「サプリが良さそうなのは分かったけれど、種類が多すぎてどれを選べばいいのか分からない」。

そんな方のために、この章では具体的なお悩みのタイプ別に、注目すべきおすすめの機能性関与成分を結論からご紹介します。

ご自身の睡眠の悩みに最も近いものからチェックしてみてください。

「寝つきが悪い」入眠障害タイプには

GABA(ギャバ):興奮を鎮め、リラックスへ導く

ベッドに入ってから、仕事のことや家庭のことが頭を駆け巡り、なかなか寝つけない…。

そんな方にはGABAがおすすめです。

GABAは、私たちの脳内に存在する神経伝達物質で、情報の伝達をコントロールし、過剰な興奮を抑える「ブレーキ役」を果たしています。

ストレスなどで交感神経が優位になっている脳を落ち着かせ、心身をリラックスした状態へと導くことで、穏やかな入眠をサポートしてくれます。

「夜中に何度も目が覚める」中途覚醒タイプには

グリシン:体の深部体温を下げ、深い睡眠を維持する

眠りについても、夜中に何度も目が覚めてしまい、朝までぐっすり眠れない…。

このような中途覚醒にお悩みの方にはグリシンが適しています。

グリシンはアミノ酸の一種で、体の中心部の温度である「深部体温」を効率的に下げる働きがあります。

人は深部体温が下がることで、より深いノンレム睡眠へと入っていきます。

グリシンはこのプロセスをスムーズにし、睡眠の安定性を高めて、夜中に目が覚める回数を減らす効果が期待できます。

「朝早く目が覚めてしまう」早朝覚醒タイプには

L-テアニン:起床時の疲労感を軽減し、睡眠の質を高める

予定よりもずっと早く目が覚めてしまい、その後二度寝もできずに疲労感が残る…。

そんなお悩みを持つ方にはL-テアニンが役立つかもしれません。

L-テアニンはお茶に含まれる旨味成分(アミノ酸)で、脳内でアルファ波というリラックス状態の脳波を増やすことが知られています。

直接的な睡眠導入作用は穏やかですが、睡眠中の心身の緊張を和らげ、睡眠の質そのものを高めることで、すっきりとした起床時の気分をサポートします。

「ぐっsり眠った感じがしない」熟眠障害タイプには

ラフマ由来成分:”睡眠の質”の向上を助ける

睡眠時間は足りているはずなのに、眠りが浅く、朝からぐったりしている…。

そんな熟眠障害タイプの方には、ラフマ由来ヒペロシド、イソクエルシトリンといった成分が注目されています。

ラフマは古くから健康茶として利用されてきた植物で、これらの成分には精神を安定させるセロトニンを増やす働きがあることが報告されています。

セロトニンが増えることで、心のバランスが整い、より深く満足感のある睡眠が得られやすくなります。

「ストレスで頭が冴えて眠れない」と感じるなら

GABAL-テアニン の組み合わせも

特に日中のストレスが強く、夜になっても頭が緊張状態から解放されないと感じる方は、興奮を鎮めるGABAと、リラックスを促すL-テアニンの組み合わせを試してみるのも良いでしょう。

異なるアプローチで心身の緊張をほぐすことで、相乗効果が期待できる場合があります。

サプリメントの中には、これらの成分がバランス良く配合されているものもあります。

主要な睡眠サポート成分6つの効果と仕組みを深掘り解説

前の章でご紹介した成分が、なぜ睡眠の悩みにアプローチできるのか、その仕組みをもう少し詳しく知りたいと思いませんか?

このセクションでは、代表的な6つの睡眠サポート成分について、体内でどのように働くのかを分かりやすく解説します。

成分の働きを理解することで、より納得してご自身に合ったサプリを選ぶことができます。

尾内医師 (精神科専門医) のコメント

臨床データや研究報告を見ると、特にGABAやL-テアニンは、日中のストレスが原因で交感神経が高ぶりがちな方の不眠に対して、良い結果が出やすいという印象がありますね。ご自身の不眠の原因がどこにあるかを考えることが、成分選びのヒントになります。

GABA(ギャバ):脳の興奮を抑えるブレーキ役

GABA(Gamma-Amino Butyric Acid)は、脳や脊髄に存在する主要な抑制性の神経伝達物質です。

情報の伝達が過剰になると、脳は興奮し、不安や緊張を感じやすくなります。

GABAは、この情報伝達のスピードを緩め、脳の活動を落ち着かせる、いわば「脳のブレーキ役」です。

ストレス社会で生きる私たちは、このブレーキが効きにくくなりがちです。

GABAを補うことで、高ぶった神経を鎮め、心身を休息モードに切り替えやすくする効果が期待されています。

グリシン:”ぐっすり”の鍵、深部体温をコントロール

グリシンは、私たちの体を構成する非必須アミノ酸の一つで、特にコラーゲンに多く含まれています。

睡眠との関連では、末梢(手足)の血流量を増やし、体からの熱放散を促すことで、体の中心部の温度である「深部体温」を効率的に下げる働きが注目されています。

人はこの深部体温が低下する過程で、スムーズに深い眠りに入ることができます。

グリシンを就寝前に摂取することで、この体温調節をサポートし、深いノンレム睡眠の時間を増やし、睡眠の質を高める効果が報告されています。

L-テアニン:お茶にも含まれるリラックス成分

L-テアニンは、緑茶や玉露などに含まれるアミノ酸の一種で、お茶の旨味や甘みに関与しています。

L-テアニンを摂取すると、脳波の中でも特にリラックスしている時に現れる「α波」が増加することが確認されています。

これにより、興奮を鎮めて心身を落ち着かせ、ストレスによる緊張を和らげる効果が期待できます。

また、睡眠の質を高め、起床時の爽快感を改善する機能も報告されており、すっきりとした朝を迎えたい方に適した成分です。

ラフマ由来ヒペロシド、イソクエルシトリン:質の高い眠りをサポート

ラフマは、中国の特定の地域に自生する植物で、古くから健康茶として飲用されてきました。

このラフマの葉に含まれる「ヒペロシド」と「イソクエルシトリン」という成分には、脳内のセロトニン濃度を高める働きがあることが研究で示されています。

セロトニンは精神を安定させるだけでなく、睡眠ホルモンであるメラトニンの原料ともなります。

この両面からのアプローチにより、眠りの深さや満足感を高め、睡眠の質の向上に貢献すると考えられています。

L-トリプトファン:幸せホルモン→睡眠ホルモンへの変化を助ける

L-トリプトファンは、体内では生成できない必須アミノ酸の一つで、乳製品や大豆製品、バナナなどに多く含まれています。

このL-トリプトファンは、日中に脳内でセロトニンに変換され、さらに夜になるとメラトニンへと変化します。

つまり、良質な睡眠に不可欠な2つのホルモンの大元となる、非常に重要な栄養素なのです。

食事から十分に摂取することが基本ですが、サプリメントで補うことで、このサイクルを円滑にし、自然な眠りをサポートする効果が期待できます。

その他注目の成分(カモミール、バレリアンなど)

上記以外にも、古くからリラックスのために用いられてきたハーブ由来の成分もあります。

【重要】後悔しない!安全な睡眠サプリの選び方3つのポイント

インターネットやドラッグストアには、数え切れないほどの睡眠サプリが並んでいます。

「どれも同じように見えるけれど、何を基準に選べば安全なの?」というあなたの疑問はもっともです。

広告のイメージだけでなく、ご自身の目で安全性を確かめるための、具体的で重要な3つのチェックポイントをご紹介します。

このポイントを押さえるだけで、安心してサプリ選びができるようになります。

尾内医師 (精神科専門医) のコメント

専門家の立場から強く推奨したいのは、サプリを選ぶ際に、どの成分が・どれだけ入っているか、を必ず確認することです。『〇〇エキス配合』といった曖昧な表記だけでなく、『機能性関与成分 GABA 〇〇mg』のように、科学的根拠の対象となる成分とその含有量が具体的に記載されているかが、信頼できる製品を見分けるための一つの重要な基準になります。

ポイント①:「機能性表示食品」または「栄養機能食品」を選ぶ

まず注目したいのが、パッケージに記載されている「機能性表示食品」や「栄養機能食品」といった表示です。

これらは「保健機能食品」と呼ばれ、国が定めた基準に基づいて、特定の健康効果を表示することが許可された食品です。

これらの表示がない「一般食品(いわゆる健康食品)」が悪いわけではありませんが、有効性や安全性について国への届出は義務付けられていません。

信頼できる製品を選ぶ第一歩として、まずはこの表示の有無を確認しましょう。

ポイント②:機能性関与成分名と含有量が明記されているか見る

次に、尾内医師のコメントにもあったように、製品の「中身」をしっかり確認することが重要です。

パッケージの裏面にある原材料表示や成分表示をチェックし、以下の2点を確認してください。

  1. 機能性関与成分の名前が明確か:例えば、「GABA」や「L-テアニン」など、どの成分が機能性の根拠となっているのかが、はっきりと記載されているかを確認します。
  2. その成分がどれだけ含まれているか(含有量):機能性表示食品では、機能性を発揮するとされる一日あたりの摂取目安量が定められています。
    例えば「GABA 100mg」のように、具体的な数値が記載されている製品を選びましょう。
    含有量が不明確なものは、十分な効果が期待できない可能性があります。

この2点を確認することで、「何が」「どれくらい」入っているのかを把握でき、より安心して製品を選ぶことができます。

ポイント③:GMP認定工場で製造されているか確認する

最後のポイントは、製品が「どこで」「どのように」作られているか、という品質管理の基準です。

そこで目安となるのが「GMPマーク」です。

GMP(Good Manufacturing Practice)とは、日本語で「適正製造規範」と訳されます。

原材料の受け入れから製造、出荷に至るまでの全工程において、製品が「安全」に作られ、「一定の品質」が保たれるようにするための製造工程管理基準です。

このGMP認定を受けた工場で製造された製品には、GMPマークが表示されています。

このマークは、製品そのものの効果を保証するものではありませんが、製造過程における高いレベルでの安全性と品質が確保されていることの証です。

健康のために口にするものだからこそ、この品質管理の証であるGMPマークの有無も、ぜひチェックしたい重要なポイントです。

このGMPマークは、これまで高品質な製品を選ぶための一つの重要な目安でしたが、近年の健康食品に関する安全性の問題を受け、政府は機能性を表示するサプリメントに対してGMP認証を義務化する方針です。

これにより、GMPは今後、安全性を担保するための必須基準となります。

サプリの効果的な飲み方と、やめ時はいつ?

ご自身に合ったサプリを見つけたら、次はその効果を最大限に引き出すための「飲み方」と、上手に付き合っていくための「続け方」が気になりますよね。

このセクションでは、サプリを飲む最適なタイミングや継続期間の目安、そしてサプリだけに頼らないための生活習慣について解説します。

また、気になる薬との飲み合わせについても触れていきます。

いつ飲むのがベスト?就寝の30分~1時間前が目安

睡眠サポート系のサプリメントは、医薬品ではないため、食前・食後のような厳密な決まりはありません。

しかし、一般的には、就寝の30分~1時間前に水またはぬるま湯で飲むのがおすすめです。

これは、摂取した成分が体内で吸収され、働き始めるまでの時間を考慮したものです。

就寝直前よりも、少し時間に余裕を持って飲むことで、ベッドに入る頃にちょうど成分が働き、心身がリラックスした状態で自然な眠りに入りやすくなります。

毎日なるべく同じ時間に飲む習慣をつけると、体内時計も整いやすくなり、より効果を実感しやすくなるでしょう。

どれくらい続けるべき?まずは1~3ヶ月試してみよう

睡眠サプリは、飲んですぐに劇的な効果が現れるものではありません。

体の内側から穏やかに働きかけ、乱れた睡眠のリズムを少しずつ整えていくものです。

そのため、数日試して「効果がない」と諦めてしまうのは早計かもしれません。

まずは1ヶ月から3ヶ月程度を目安に、継続して試してみることをおすすめします。

私たちの体の細胞が生まれ変わるサイクル(ターンオーバー)も考慮すると、体質改善にはある程度の時間が必要です。

毎日続ける中で、「そういえば、夜中に起きる回数が減ったかも」「朝の疲労感が少し楽になったかな」といった、小さな変化に気づけるかもしれません。

サプリと併用して行いたい、睡眠の質を高める生活習慣

サプリメントはあくまで”サポート役”です。

その効果を最大限に活かすためには、土台となる生活習慣を見直すことが不可欠です。

膨大な健康データの中から、特に睡眠の質向上に有効とされる5つの生活習慣をご紹介します。

  1. 朝日を浴びる起床時に15分程度、太陽の光を浴びましょう。これが体内時計をリセットし、夜の自然な眠気を誘うメラトニンの分泌を促します。
  2. 日中の適度な運動:ウォーキングなどの軽い運動を日中に行うことで、心地よい疲労感が得られ、夜の寝つきがスムーズになります。ただし、就寝直前の激しい運動は逆効果なので注意しましょう。
  3. ぬるめのお風呂にゆっくり浸かる:就寝の90分前くらいに、38~40℃のぬるめのお湯に15分ほど浸かるのが理想です。
    一旦上がった深部体温が、その後下がっていく過程で強い眠気が訪れます。
  4. 就寝前のスマホ・PCを控える:画面から発せられるブルーライトは、脳を覚醒させ、メラトニンの分泌を抑制してしまいます。就寝1時間前からは、読書やストレッチなど、リラックスできる時間に切り替えましょう。
  5. カフェイン・アルコールを避ける:コーヒーや緑茶に含まれるカフェインは、覚醒作用が3~4時間続きます。
    夕方以降は控えましょう。
    また、アルコール(寝酒)は寝つきを良くするように感じますが、実際には眠りを浅くし、中途覚醒の原因となります。

併用に注意が必要な薬やサプリはある?

サプリメントは食品ですが、特定の医薬品の効果に影響を与えたり、成分が重複して過剰摂取になったりする可能性があります。

特に、すでに医師から睡眠薬や抗うつ薬、抗不安薬などを処方されている方は、自己判断でサプリメントを併用しないでください。

必ず、かかりつけの医師や薬剤師に「このサプリを飲んでも大丈夫か」を相談するようにしましょう。

また、複数の健康食品を同時に摂取する場合も注意が必要です。

意図せず同じ成分を過剰に摂取してしまうリスクがあります。

パッケージの成分表示をよく確認し、分からないことがあれば専門家に相談することが大切です。

睡眠サプリに関するよくある質問(FAQ)

ここまで読み進めて、睡眠サプリについて多くのことをご理解いただけたかと思います。

最後に、多くの方が抱く素朴な疑問や不安について、Q&A形式で簡潔にお答えします。

尾内医師 (精神科専門医) のコメント

副作用がどうなのか、心配になるお気持ちはよく分かります。サプリは医薬品ではないので、処方薬のような重篤な副作用の報告は稀ですが、食品アレルギーがある方や、体質に合わない可能性はゼロではありません。何か普段と違う異変を感じたら、すぐに使用を中止し、必要であれば医師や薬剤師に相談してくださいね。

Q. 副作用や依存性はありますか?

A. 正しく摂取量を守っている限り、医薬品のような強い副作用や、やめられなくなるような依存性のリスクは極めて低いと考えられています。

ただし、体質によっては、胃腸の不快感や眠気を感じる方もいます。

また、植物由来の成分にアレルギーがある方は、原材料をよく確認してください。

Q. 高齢者が飲んでも大丈夫ですか?

A. 基本的に高齢者の方が飲んでも問題ありません。

むしろ、加齢によって睡眠が浅くなりがちな方の睡眠の質をサポートする助けになります。

ただし、多くの薬を服用されている方は、かかりつけ医や薬剤師に飲み合わせを確認してもらってから始めると、より安心です。

Q. 複数のサプリを一緒に飲んでも良いですか?

A. 複数のサプリを併用する際は、成分の重複に注意が必要です。例えば、AとBのサプリに両方GABAが含まれていると、知らず知らずのうちに過剰摂取になる可能性があります。

それぞれのパッケージを確認し、成分が重複していないかチェックしましょう。

不明な点は、メーカーのお客様相談室や薬剤師に確認することをおすすめします。

Q. 妊娠中や授乳中に飲んでも良いですか?

A. 妊娠中や授乳中は、お母さんの体が非常にデリケートな時期であり、摂取した成分が赤ちゃんに影響を与える可能性も否定できません。

多くのサプリメントは、この時期の安全性に関する十分なデータがありません。そのため、パッケージにも「妊娠・授乳中の方はお控えください」と記載されていることがほとんどです。

自己判断で摂取せず、必ず医師に相談してください。

Q. メラトニンのサプリは日本では買えないのですか?

A. 海外ではメラトニンがサプリメントとして販売されていますが、日本ではメラトニンは医薬品に指定されています。

そのため、サプリメントとして製造・販売することは法律で認められていません。医師の処方によってのみ入手可能です。個人輸入などで入手する方法もありますが、品質や安全性に問題があるケースも報告されており、推奨できません。

それでも改善しない…専門医に相談すべきサインとは

サプリメントを試し、生活習慣も見直してみたけれど、一向に睡眠の悩みが改善しない…。

そんな時は、一人で抱え込まずに専門家の力を借りることも大切です。

不眠の背景に、治療が必要な病気が隠れている可能性もあります。

このセクションでは、セルフケアの範囲を超え、睡眠外来や精神科(心療内科)といった専門医への相談を検討すべき具体的なサインについてお伝えします。

2週間以上、ほとんど眠れない日が続く

臨床的に「慢性不眠障害」と診断されるには、週3回以上の不眠症状が3か月以上続くことが一つの基準となります。

しかし、2週間以上にわたって不眠が続き、日常生活に支障が出ている場合は、セルフケアで対応できる範囲を超えている可能性があります。

慢性化を防ぐためにも、早期に専門医へ相談することを強くお勧めします

日中の眠気がひどく、仕事や家事に支障が出ている

夜眠れないことによって、日中に強い眠気に襲われたり、集中力が続かなかったりして、仕事でミスが増える、家事が手につかない、といった具体的な支障が出ている場合は、治療が必要です。

QOL(生活の質)を著しく下げてしまう前に、早めに受診を検討してください。

気分が落ち込む、やる気が出ないなど、精神的な不調がある

不眠は、うつ病などの精神的な不調の入り口となることもあれば、逆にうつ病の一症状として現れることもあります。

眠れないこと以外に、「これまで楽しめていたことに興味がなくなった」「理由もなく気分がひどく落ち込む」「食欲がない」といった症状が伴う場合は、心の健康状態を専門家に見てもらうことが重要です。

睡眠外来・精神科(心療内科)ではどんな治療をするの?

専門医を受診することに、高いハードルを感じる必要はありません。

クリニックでは、まず詳しい問診を通して、あなたの睡眠の状態や生活習慣、ストレスの状況などを丁寧にヒアリングします。

その上で、睡眠衛生指導(生活習慣のアドバイス)や、必要に応じた薬物療法(睡眠薬の処方)、心理療法など、一人ひとりに合った治療法を提案してくれます。

まずは「相談に行く」という気持ちで、気軽にドアを叩いてみてください。

まとめ:自分に合ったサプリを見つけて、心地よい眠りを取り戻しましょう

今回は、50代女性の多くが抱える不眠の悩みについて、その原因から、サプリメントと薬の違い、ご自身のタイプに合ったサプリ成分の選び方、そして安全な製品を見極めるための具体的なポイントまで、詳しく解説してきました。

大切なのは、睡眠サプリを「魔法の薬」ではなく、あくまでご自身の睡眠をサポートするための「賢い選択肢の一つ」と捉えることです。

生活習慣の改善という土台の上に、ご自身の不眠タイプに合った成分を正しく取り入れることで、きっと今よりも心地よい眠りへの道筋が見えてくるはずです。

尾内医師 (精神科専門医) のコメント

一人で悩まず、まずはサプリのような手軽な方法を試してみるのは、とても良い一歩です。この記事が、あなたの睡眠改善のきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。それでも、もし本当につらい時は、決して我慢しないでください。私たち専門家は、いつでもあなたの味方です。

最後に、今日から実践できる「睡眠サプリ選びの最終チェックリスト」をご用意しました。ぜひ、ご活用ください。

睡眠サプリ選び 最終チェックリスト

チェック項目はい / いいえ
1. 自分の不眠タイプを把握したか? (寝つきが悪い、途中で起きるなど)
2. タイプに合った成分を選んでいるか? (GABA, グリシン, テアニンなど)
3. 「機能性表示食品」の表示があるか?
4. 機能性関与成分名と含有量が明記されているか?
5. GMP認定工場で製造されているか?
6. 改善しない場合の相談先も考えているか? (専門医など)

参考文献

  1. 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」  
  2. 厚生労働省 e-ヘルスネット「不眠症」  
  3. 厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠と女性ホルモン」  
  4. 厚生労働省 e-ヘルスネット「セロトニン」  
  5. 消費者庁「機能性表示食品について」  
  6. 消費者庁「機能性表示食品とは(PDF資料)」  
  7. 厚生労働省「医薬品成分(メラトニン)が検出されたいわゆる健康食品について」  
  8. 厚生労働省「健康食品のGMP(適正製造規範)について知っていますか?」  
  9. 科学技術振興機構「なぜセロトニンがなくなると眠れなくなるのか?-睡眠・覚醒リズムを調節する脳内メカニズムを解明-」  
  10. 科学技術振興機構 J-GLOBAL「GABA A 受容体きっ抗薬ピクロトキシンはプロゲステロンにより引き起こされるほとんどの睡眠変化を減弱させる」  

この記事を書いた人

葛飾橋病院

葛飾橋病院では精神科、神経科、内科、放射線科、歯科と様々な診療、治療を行っています。職員一同心をひとつに合わせて、患者様、ご家族の皆さまに心から安心していただけるホスピタルづくりを進めており、地域に密着した精神科医療の活性化に尽力していきます。当ブログでは精神科を中心とした記事を作成し患者様の心を少しでも和らげられるような発信をしていきます。