
仕事のことを考え出すと止まらなくて、布団の中で目が冴えてしまいます。

イライラした日ほど寝つけません。眠れないこと自体が不安になってきました。
このような夜が続いていませんか。
ストレスは、眠れなくなる原因としてもっとも多いもののひとつです。一般成人の30〜40%が何らかの不眠症状をもつとされ、その入り口になるのが日常のストレスです。
やっかいなのは、眠れないこと自体が新しいストレスになって、眠れない状態だけが長引いてしまうことです。
きっかけになった出来事が片づいたのに、寝つけない夜だけが残ってしまう。ストレスで寝れない日が続く人の多くが、この状態におちいっています。
この記事でわかることは次のとおりです。
ストレスで眠れないのはなぜ?

ストレスがかかっているとき、体は「休む」よりも「対応する」ほうに傾いています。
眠りに入るには、体と頭の緊張がゆるむ必要があります。緊張したままでは、どれだけ長く布団にいても眠りのスイッチが入りません。
つまり、眠れないのは気合いや我慢が足りないからではありません。体が起きている方向に傾いているだけです。
緊張が続くと眠りのスイッチが入らない
嫌なことがあった日や、翌日に大事な予定がある日は寝つきが悪くなります。
これは体が警戒している状態で、眠ることより起きていることが優先されているためです。誰にでも起こる自然な反応です。
心配ごとがあるときの不眠は、ふつうは数日から数週間でおさまります。きっかけが落ち着けば、眠りも自然に戻っていきます。
問題は、きっかけが過ぎたのに眠れない状態だけが残ってしまうときです。
ストレスがあるときに出やすい眠れ方

ストレスによる不眠の出方は、人によって違います。
寝つけないタイプだけでなく、寝ついたあとに何度も目が覚めるタイプや、朝早く目が覚めてしまうタイプもあります。
| 眠れ方 | ストレスがあるときの現れ方 |
|---|---|
| 寝つけない (入眠障害) | 布団に入っても 考えごとが止まらず 目が冴えたまま時間が過ぎる |
| 夜中に目が覚める (中途覚醒) | 寝ついても眠りが浅く 物音や夢で 何度も目が覚める |
| 朝早く目が覚める (早朝覚醒) | 起きる時間より早く目覚め そのまま考えごとが 始まってしまう |
自分がどの出方をしているかがわかると、夜の過ごし方を変えやすくなります。
眠りが浅いと感じていても、日中の生活に支障がなければ不眠症とは診断されません。眠れた時間の長さより、日中をどう過ごせているかが目安になります。
こだわりやすい人ほど長引きやすい

真面目な人、神経質な人ほど、眠れないことにこだわりやすいといわれています。
「7時間は眠らないといけない」「早く寝ないと明日がつらい」と考えるほど、眠れない夜が特別なできごとになってしまいます。
ですが、必要な睡眠時間には大きな個人差があります。日本人の平均は7時間半ほどですが、これはあくまで平均で、全員がこの時間を必要としているわけではありません。
時間の数字にこだわりすぎないことが、ストレスによる不眠から抜けるうえで大切です。
眠れないこと自体が新しいストレスになる

ストレスで眠れない夜が何日か続くと、眠れないこと自体が心配の種になります。
きっかけになったストレスが片づいたあとも、この心配だけが残って不眠が続くことがあります。
一時的な不眠で終わるか、長引く不眠になるかの分かれ目は、ここにあります。
「また今夜も眠れないのでは」という不安
夕方になると、今夜は眠れるだろうかと気になり始めます。
布団に入ってからも「早く眠らなければ」と焦り、その焦りでかえって目が冴えてしまいます。この状態を不眠恐怖と呼びます。
一過性だった不眠が慢性化していく背景には、この不眠恐怖があるとされています。眠ろうと力を入れるほど、眠りから遠ざかってしまうのです。
そのため、「どうせいつかは眠くなる。眠くなるまで起きていよう」くらいに割り切ったほうが、結果的にうまくいきます。
眠れないまま布団に居続けると悪化する

眠れないときに、目をつぶってじっと横になり続けている人は多いと思います。
しかし、眠れないのに我慢して寝床にいると、かえって不眠が悪化することがわかっています。
布団が「眠れない場所」として体に覚え込まれてしまうためです。長く居続けるほど寝つきが悪くなり、眠りも浅くなっていきます。
次のような過ごし方をしていないか、思い返してみてください。
不眠が長引く人に共通していること
眠れない状態が長引く人には、いくつか共通した特徴があります。
眠れなかった翌日ほど、予定を減らして家でじっとしていたくなります。
ところが日中の活動量が減ると、夜に眠る力も弱まってしまいます。前の晩にどれだけ眠れたかにかかわらず、日中はなるべく活動的に過ごすほうが、その日の夜につながります。
ストレスによる不眠はいつまで続くのか

多くの場合、ストレスによる不眠は、原因が落ち着けば数日から数週間でおさまります。
ただし、眠れない状態と日中の不調が続く期間によって、医療のうえでの呼び方が変わります。
| 続いている期間 | 呼び方 | 中心になっているもの |
|---|---|---|
| 3か月未満 | 短期不眠症 (短期不眠障害) | ストレスなど きっかけが はっきりしていることが多い |
| 3か月以上 かつ週3日以上 | 慢性不眠症 (慢性不眠障害) | きっかけよりも 眠れないことへの こだわりが中心になる |
慢性不眠症にあたる人は、成人の約10%とされています。決してめずらしい状態ではありません。
ただし、これは「3か月たつまで様子を見る」という意味ではありません。日中のつらさがすでに出ているなら、その時点で相談して構いません。

「眠れないこと」を治そうとするほど、眠りは遠のいていきます。眠れた時間の長さよりも、日中どう過ごせているかが手がかりになります。
眠れない夜が何日か続いても、多くは一時的なもので落ち着いていきます。ただし気分の落ち込みや強い眠気が重なるときは、別に考える必要があります。
イライラして眠れない夜と考えすぎて眠れない夜

イライラしている夜と、考えごとが止まらない夜では、やることが少し違います。
どちらにも共通しているのは、頭が働き続けているうちは、布団に入っても眠れないということです。
まずは眠ろうとするのをやめて、頭の回転を落とすことを目標にしてください。
イライラしているときは布団から出る
腹が立ったまま布団に入ると、その出来事を何度も思い返してしまいます。思い返すたびに、気持ちも体も高ぶっていきます。
眠気が来ないまま時間が過ぎていくときは、思いきっていったん布団から出ましょう。
明るすぎない部屋で、音も光も少ない場所で静かに過ごします。眠気が戻ってきてから、布団に戻ってください。
これは我慢が足りないということではありません。布団と眠りの結びつきを守るための行動です。
考えごとが止まらないときは紙に書き出す

明日やることや気になっていることが次々に浮かんでくるときは、紙に書き出してしまうのがおすすめです。
頭の中だけで管理しようとすると、忘れないように何度も思い返すことになります。それが目が冴える原因になります。
書いて外に出しておけば、「明日この紙を見ればいい」と切り替えやすくなります。
書くのは寝る直前ではなく、布団に入る少し前のほうが向いています。布団の中で書き始めると、そのまま考えごとが再開してしまうためです。
スマートフォンと時計を寝室から離す

眠れないときにスマートフォンを見ると、光と情報の両方で頭が起きてしまいます。
寝室にはスマートフォンやタブレットを持ち込まず、できるだけ暗くして眠るほうが眠りやすくなります。
時計も同じです。何時かを確かめるたびに、残りの時間を数えて焦りが強くなります。目に入らない場所に置いておきましょう。

「考えごとをやめよう」と思っても、考えごとは止められません。止めようとすること自体が頭を働かせてしまうからです。
外に出す、場所を変える、といった行動のほうが現実的です。布団から出るのは、不眠の治療でも実際に使われている考え方です。眠れないまま布団にいる時間を減らすことを意識してみてください。
仕事や人間関係のストレスで眠れないとき今夜やること

仕事や人間関係の悩みは、今夜のうちに解決するものではありません。
それでも、夜の過ごし方を変えるだけで寝つきやすさは変わります。悩みそのものを片づけなくても、できることはあります。
今夜からできることを、時間の流れに沿ってまとめました。
| タイミング | やること | 避けること |
|---|---|---|
| 帰宅後 | 就寝までに 30分の余白をつくる | 布団の中で 仕事の連絡を確認する |
| 就寝1〜2時間前 | ぬるめの湯に入る 半身浴でもよい | 熱すぎる湯 寝る直前の激しい運動 |
| 就寝前 | 部屋を暗くして 呼吸をゆっくりにする | 寝酒で眠ろうとする |
| 布団の中 | 眠気が戻らなければ いったん布団から出る | 時計を見て 残り時間を数える |
就寝までに30分の余白をつくる
帰宅してから布団に入るまで、ずっと仕事の続きをしていませんか。
メールの確認や明日の準備をぎりぎりまで続けると、頭が仕事モードのまま布団に入ることになります。
寝る前の30分は、何も決めなくていい時間にしてください。照明を落とす、音量を下げる、それだけでも構いません。
この余白があるかないかで、布団に入ってからの考えごとの量が変わってきます。
入浴は就寝の1〜2時間前に
就寝の1〜2時間前に入浴すると、布団に入ってから眠りにつくまでの時間が短くなると報告されています。
湯はぬるめにして、体を温めすぎないことが大切です。半身浴でも構いません。
熱すぎる湯は体を目覚めさせる方向に働きます。寝る直前の熱いシャワーは避けましょう。
寝室は暗く20℃前後に整える
眠りやすい室温の目安は20℃前後、湿度は40〜70%です。
暑すぎても寒すぎても、夜中に目が覚めやすくなります。
ストレスがあるときは、ちょっとした物音や光でも目が覚めやすくなっています。寝室の環境を整えておくと、その分だけ眠りが途切れにくくなります。
ストレスをためない日中の過ごし方

夜の対処だけでは、ストレスによる不眠から抜けにくいものです。
眠りの準備は、朝起きた時点から始まっています。日中の過ごし方を少し変えるだけで、夜の眠りやすさは変わります。
ここでは、今日から変えられるものを4つに絞って紹介します。
起きる時間をそろえて朝の光を浴びる
眠れなかった翌朝ほど、寝坊して取り返したくなります。
ですが、起きる時間がずれると体内時計が乱れ、その日の夜がまた眠りにくくなります。休日の寝坊や昼寝のしすぎも、同じように体内時計を乱します。
起床後に朝日の強い光を浴びると、体内時計がリセットされます。早く寝ようとするよりも、早く起きることが早寝につながります。
就寝時刻は自分で決められませんが、起床時刻は自分で決められます。まずは起きる時間だけをそろえてみてください。
昼寝は午後3時前までに30分以内
日中に眠気が強いときは、短い昼寝で乗り切って構いません。
ただし、午後3時より前に、30分以内にとどめてください。
それ以上長く寝たり、夕方以降に寝たりすると、その日の夜の寝つきが悪くなります。夜の眠りを前借りしてしまうためです。
運動は午後に軽く汗ばむ程度
運動は、ストレスを抜くうえでも眠りのうえでも役に立ちます。
時間帯は、午前よりも午後のほうが向いています。軽く汗ばむ程度で十分です。
激しい運動は体を興奮させる方向に働いてしまい、かえって逆効果になります。寝る直前の強いトレーニングは避けましょう。
カフェインと寝酒に頼らない
コーヒーや紅茶、エナジードリンクなどのカフェインは、1日400mgを超えないようにします。
カフェインには利尿作用もあるため、夜中にトイレで目が覚める回数も増えます。夕方以降は控えめにしておきましょう。
寝酒もおすすめできません。お酒を飲むと寝つきやすく感じますが、飲んだあとは深い睡眠が減り、朝早く目が覚めることが増えます。
効果も短い時間しか続きません。眠るために飲むお酒は、不眠を長引かせる方向に働いてしまいます。
ストレスで眠れない日が続くときの受診の目安

ストレスによる不眠は、多くが一時的なもので終わります。
ただし、眠れない状態が長く続くときや、日中のつらさが強いときは、我慢せずに相談してください。
病院で相談するだけでも、眠れないことへの不安はやわらぎやすくなります。不眠恐怖から抜けるきっかけになることもあります。
週3日以上・3か月以上がひとつの目安
眠れない夜と日中の不調が、週に3日以上あり3か月以上続いている場合は、慢性不眠症にあたります。
この状態になると、眠れないことへのこだわりが中心になり、自分だけで抜け出すのが難しくなります。
とはいえ、3か月を待つ必要はありません。日中の生活に支障が出ている時点で相談して構いません。
不眠の相談は、かかりつけの病院で受けられることが大部分です。まずは身近な医師に伝えてみてください。
こころの病気のサインがあるとき
ストレスによる不眠と、こころの病気にともなう不眠は、見分けがつきにくいことがあります。
次のような様子があるときは、早めに専門医に相談してください。
うつ病などのこころの病気では、不眠が最初のサインとして現れることがあります。
死にたい気持ちがある、自分を傷つけたくなる、消えてしまいたいと感じるときは、様子を見ずにすぐ精神科・心療内科を受診してください。
夜間や休日は、厚生労働省の相談窓口も使えます。まもろうよ こころに、電話とSNSの相談先がまとまっています。
生活の工夫や睡眠の指導を受けても眠れない状態が続くときは、精神科や心療内科で相談するという選択肢もあります。
ドラッグストアで買える睡眠改善薬は、短い期間だけ使うためのものです。不眠症に対する治療効果は確かめられていません。眠れない日が続くときは、飲み続けずに医療機関へ相談しましょう。

「ストレスのせいだから、自分でどうにかするしかない」と考えて、受診が遅れることがあります。不眠は、原因を取り除かないと相談できないものではありません。
眠れない状態そのものに対してできることがあります。眠れない夜が続いて日中がつらいと感じたら、その時点で相談していただいて構いません。
眠れない状態が続いていても、仕事や家事の合間に受診の時間をとるのは簡単ではありません。
オンライン診療なら、通院の時間をとらずに医師へ相談できます。
ストレスで眠れないときのよくある質問
- Qストレスで眠れないのは何日くらい続きますか?
- A
ストレスがきっかけの不眠は、そのきっかけが落ち着くにつれて戻っていくことがほとんどです。
きっかけが落ち着いても眠れない状態だけが残るときは、眠れないことへのこだわりが原因になっている可能性があります。
眠れない夜と日中の不調が週3日以上あり3か月以上続くと、慢性不眠症にあたります。
- Qイライラして眠れない夜はどうすればいいですか?
- A
眠気がないまま時間が過ぎていくときは、いったん布団から出てください。
明るすぎない部屋で静かに過ごし、眠気が戻ってから布団に戻ります。
眠れないまま横になり続けると、かえって寝つきが悪くなることがわかっています。
- Qストレスで眠れないときにお酒を飲むのはだめですか?
- A
眠るためのお酒はおすすめできません。
寝つきやすく感じても、飲んだあとは深い睡眠が減り、朝早く目が覚めることが増えます。
効果も短い時間しか続かないため、結果として眠れない状態を長引かせてしまいます。
- Qストレスがなくなれば眠れるようになりますか?
- A
きっかけが落ち着けば眠りが戻る方が多くいます。
ただし、眠れない状態が続くうちに「また眠れないのでは」という不安が強くなると、きっかけが消えても不眠だけが残ることがあります。
そうなる前に、布団で過ごす時間や日中の過ごし方を見直しておくことが大切です。
- Qストレスで眠れないときは何科に相談すればいいですか?
- A
まずはかかりつけの医師に相談して構いません。不眠の相談は、かかりつけの病院で受けられることが大部分です。
気分の落ち込みや意欲の低下をともなうとき、睡眠の指導を受けても眠れない状態が続くときは、精神科や心療内科で相談するという選択肢もあります。
まとめ
ストレスで眠れない夜が続くと、眠ることそのものがプレッシャーになっていきます。
まずは「眠ろうとする努力」を少し手放して、眠くなってから布団に入るところから変えてみてください。
それでも眠れない日が続き、日中がつらいと感じるときは、我慢せずに医療機関に相談しましょう。
参考資料
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「不眠症」https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-02-001
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf
- 国立精神・神経医療研究センター こころの情報サイト「不眠症(睡眠障害)」https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=XpsDJBKfyaGD0mIx
― ごあいさつ ―
葛飾橋病院は昭和32年の開院以来、地域の皆様や多くの病院の方々にご協力をいただき、半世紀をこえる歴史を重ねてまいりました。
当コラム記事ではさまざまな心の病を持っている方のお手伝いができればと考えています。


