人と距離を取り、親密な関係になるほど不安や息苦しさを感じてしまう回避型愛着障害は、本人の性格ではなく、過去の養育環境や対人経験の積み重ねによって形成される傾向があります。
本記事では、回避型愛着障害の基本的な考え方から、主な原因・男女共通の特徴・セルフチェックの注意点・改善に向けた向き合い方までを整理します。
自分や身近な人を理解する手がかりとして役立ててください。
回避型愛着障害は他者と絆を築くことに困難を感じている状態
回避型愛着障害は、他者と親密な関係を築こうとすると強い抵抗感や不安が生じ、無意識のうちに距離を取ってしまう心理的な傾向を指します。
自立心が強く冷静に見える一方で、心の奥では人に頼ることや感情を共有することへの恐れを抱えている場合があります。
幼少期に十分な安心感を得られなかった経験が影響し、他人に期待しない姿勢を身につけた結果、感情を抑え込む習慣が形成されやすいです。
人と関わらないことで心を守ろうとする防衛反応が根底にあり、本人にとっては必要な対処法であった点も理解する必要があります。
回避型愛着障害になる主な原因
回避型愛着障害は、突然生じるものではなく、成長過程における人間関係の積み重ねによって形成される傾向にあります。
安心して気持ちをあずけられる経験が乏しい環境だと、他者と距離を取ることが心を守る手段となりやすいでしょう。
親や養育者との関係性・家庭内の雰囲気・過去の対人トラブルなどが影響し、感情を抑える行動様式が定着する場合もあります。
以下で回避型愛着障害になる原因を詳しく解説します。
幼少期の親子関係や家庭環境の影響が大きい
幼少期の親子関係や家庭環境においては、以下のような要因が回避型愛着障害の形成に関わると考えられています。
上記に挙げたような環境で幼少期を過ごしていた子どもは、気持ちを受け止めてもらう体験が不足しやすいです。
結果として、人に期待しないほうが安全だと学習し、感情を抑えて距離を取る行動が身につく傾向にあります。
他者からの裏切り行為などによるトラウマ
他者からの裏切り行為や強い否定的経験も、回避型愛着障害の形成に大きな影響を与えます。
信頼していた相手からの裏切り・突然の別れ・いじめやハラスメントなどの対人トラウマを経験した人は、人と深く関わることそのものを危険だと感じやすいでしょう。
その結果、再び傷つかないよう感情を切り離し、一定の距離を保つ関係を選ぶようになります。

監修者コメント
トラウマを抱えている人は、表面上は冷静に見えても、内面では不安や警戒心を抱えている場合も少なくありません。
こうした反応は心を守るために身についたものであり、本人の弱さだけが原因ではない点を理解する姿勢が大切です。
【男性・女性共通】回避型愛着障害の特徴

回避型愛着障害の特徴は男女による大きな違いはなく、対人関係や感情の扱い方に共通した傾向が見られます。
本人は問題なく生活できていると感じやすく、不調として自覚しにくい点も特徴のひとつです。
周囲との距離感や内面のあり方を知ることで、無意識に続けている行動パターンに気づくきっかけとなります。
人と深いつながりを持つことを避ける

回避型愛着障害の人は、人と親密になるほど強い違和感や不安を覚えやすくなります。
表面的な会話や仕事上の付き合いは問題なくこなせても、心の内側に踏み込まれるような状況では距離を置こうとします。
相手に期待されたり依存されたりする場面を負担に感じやすく、無意識のうちに連絡頻度を減らしたり関係を終わらせたりする行動が見られます。
上記のような行動は冷たさから生じるものではなく、過去の経験から身についた自己防衛反応です。
人と深く関わることで傷つく可能性を避けようとする心理が強く働いています。
感情表現が苦手

自分の感情を言葉や態度で表現することに強い抵抗を感じやすい点も回避型愛着障害の特徴のひとつです。
悲しみや不安だけでなく、喜びや安心感でさえ表に出すことが苦手な人も多いでしょう。
感情を抑える習慣が長く続いた結果、自分が何を感じているのかわからなくなるケースもあります。
周囲からは落ち着いて見える一方で、内面では感情を処理しきれずに溜め込んでいることもあります。

監修者コメント
回避型愛着障害の人は感情を表に出すと否定される、傷つくという学習経験が影響し、気持ちを表現しない選択を取りやすいでしょう。
1人の時間を好む

回避型愛着障害の人は、他者と過ごす時間よりも1人でいる時間に強い安心感を覚えやすい傾向があります。
誰にも気を遣わず、自分の感情を調整しなくてよい環境では、心の緊張が自然と和らぎます。
反対に集団行動や長時間の人付き合いでは、本人が意識しないまま精神的な疲労が蓄積していきます。
周囲からは孤独を好んでいるように映る場合がありますが、人間関係そのものを拒絶しているわけではありません。
人と関わることで消耗しすぎないよう、適切な距離を保つ選択を無意識に行っている状態と考えられます。
自分自身に対して関心が薄い

回避型愛着障害の人は、自分の感情や欲求に意識を向ける機会が少なく、何を感じて何を望んでいるのかを把握しづらい傾向にあります。
他者に頼らず問題を処理する姿勢が長く続いた結果、自分の内面を見つめる習慣が十分に育たないと行ったケースもあります
自分の内面を見つめる機会が少なかった影響で、無理をしているという感覚に気づきにくく、心身の不調を感じても対処を後回しにしてしまいやすいでしょう。

監修者コメント
回避型愛着障害が重症化すると、ストレスが限界に近づくまで自覚できないケースも少なくありません。
症状を問題として認識しにくいため医療機関への相談が遅れ、心理的な負担が蓄積しやすい点には注意が必要です。
回避型愛着障害のセルフチェックと診断の注意点
回避型愛着障害は日常生活を送れている場合ほど自覚しにくい傾向にあります。
そのため、対人関係の違和感や生きづらさを性格の問題として処理してしまう人も少なくありません。
セルフチェックは自分の傾向を客観的に見つめ直すための一つの手段です。
ただし結果だけで結論を出さず、あくまで気づきのきっかけとして活用する姿勢が求められます。
セルフチェック表
以下は回避型愛着障害のセルフチェック表です。
当てはまる項目が多い場合は回避型愛着障害の傾向がある可能性があります。
セルフチェック表に当てはまる項目が多かったとしても、必ずしも回避型愛着障害であるとは限りません。
一時的なストレスや性格特性によって似た行動が観られる場合もあります。
重要なのは、これらの傾向によって人間関係に苦しさや生きづらさを感じているかどうかです。
専門家に相談することで心理を整理しやすくなるため、気になる人は専門家のカウンセリングを受けてみるとよいでしょう。
自己判断での決め付けはNG
セルフチェック表の項目に多く当てはまった場合でも、すぐに回避型愛着障害と断定することは避けなければなりません。
似た傾向は性格特性や一時的なストレス状態でもみられるため、自己判断だけでは正確な見極めができません。
また、回避型愛着障害は診断名として扱われないケースもあり、専門的な評価が欠かせません。
不安や生きづらさが続く場合は心療内科や精神科、カウンセリング機関などで相談する選択が現実的です。
自分で決めつけるものではなく、状態を理解する姿勢が回復への第一歩となります。
回避型愛着障害の治し方

回避型愛着障害は、生まれつき固定されたものではなく、向き合い方次第で緩和が期待できます。
人と距離を取る行動には過去の経験から身についた理由があります。
その背景を理解し、安全だと感じられる体験を積み重ねていくことが回復への第一歩です。
焦って変わろうとせず、自分のペースで取り組む姿勢が重要です。
幼い頃のプロセスをやり直す
回避型愛着障害の改善では、幼少期に十分得られなかった安心感を大人になってから補う視点が大切です。
当時は助けを求められなかった感情や欲求を、今の自分が丁寧に認めていく作業が必要になります。
過去を否定するのではなく、辛かった経験があった事実を受け止めることから始まります。
日記を書くなど、感情を書き出すことも非常に有効です。
感情を文字にすることで自分の気持ちに気づき、受け止める体験を重ねることで人との関わりに対する警戒心が少しずつ和らいでいきます。
この積み重ねが、対人関係の土台を作り直すきっかけとなります。
気持ちを語れる相手を見つける
回避型愛着障害の人にとって、気持ちを言葉にする行為は強い不安を伴います。
それでも安全だと感じられる相手と少しずつ感情を共有する経験は大きな意味を持ちます。
最初から深い話をする必要はありません。
心地良さを感じる相手と何気ない会話から始め、少しずつ他者を受け入れる努力をする必要があります。

監修者コメント
気持ちを話しても関係が壊れない経験を積み重ねることで、人に頼ることへの恐怖心が和らぎ、他者から頼られる喜びを感じ始めます。
信頼関係は一度に築くものではなく、時間をかけて育てていくものなのです。
自分を癒す存在をつくる
人との関係だけに回復を求めず、自分を落ち着かせる存在を持つことも重要です。
自分を落ち着かせる存在の一例を以下に挙げるので参考にしてみてください。
上記はあくまでも一例なので、自分に合った心を安らげる方法を探してみてください。
自分を癒やす手段を知ることで、感情が揺れた際に立て直しやすくなります。
専門家のサポートを受ける
回避型愛着障害の改善には、専門家のサポートが非常に有効です。
心療内科・精神科・カウンセリングでは、対人関係のパターンを整理しながら安全な環境で感情を扱えます。
第三者の視点が入ることで、自分では気づけなかった思考の癖が見えてきます。
治療は短期間で劇的に変わるものではありませんが、継続することで確実に変化が積み重なります。
1人で抱え込まず、支援を受ける選択も回復への大切な一歩です。
恋愛できない?回避型愛着障害の彼氏・彼女への接し方

回避型愛着障害があるからといって、恋愛そのものができないわけではありません。
相手の特性を理解し、関わり方を工夫することで、安定した関係を築くことは十分可能です。
大切なのは、距離を取る行動を愛情の欠如と決めつけず、不安の現れとして受け止める姿勢です。
上手く付き合えば、回避型愛着障害の恋愛相手とも、信頼を土台としたよりよい関係を育てられます。
回避型愛着障害の恋愛相手への接し方で意識しておきたいポイントは以下になります。
回避型愛着障害の人との恋愛では、近づきすぎず離れすぎないといった距離のバランスが求められます。
時間をかけて安心感を育む関係性が、結果的に心の距離を縮めていきます。

監修者コメント
回避型愛着障害の人と恋愛関係になった場合、相手に対して「なぜ?どうして?」が蓄積されていくことがあります。
そんなときは、相手が今まで背負ってきた「背景」を知ることが大切です。
「なぜ」の答えにたどり着くと、自分たちなりの愛し方が見えてくるきっかけとなるでしょう。
回避型愛着障害のよくある質問・Q&A
- Q回避型愛着障害と不安型愛着障害の違い何ですか?
- A
回避型愛着障害と不安型愛着障害は、対人不安の現れ方が大きく異なります。
回避型は人との親密さに不安を感じ、距離を取ることで心の安定を保とうとします。
一方、不安型は見捨てられる恐れが強く、相手に過度に近づこうとする傾向にあります。
回避型は自律を重視し感情を抑えやすく、不安型は感情表現が強くなりやすい点が特徴です。
- Q回避型愛着障害は恋愛相手に対してどんな傾向が見られますか?
- A
回避型愛着障害の人は、恋愛相手の内面や感情よりも、家柄や学歴、容姿といった客観的な要素に関心を向けやすくなります。
感情的なつながりを避けるため、条件面で相手を評価する傾向が強まります。
また、相手に頼られたり依存されたりすると負担を感じ、煩わしさや怒りが生じる場合もあります。
親密さが増すほど距離を置こうとする行動が観られ、恋愛関係が不安定になりやすい点も特徴です。
- Q回避型愛着障害は子どもに対してどんな傾向が見られますか?
- A
回避型愛着障害は、子どもとの関わりに戸惑いを感じやすいです。
子どもが苦手だと感じる場合や、愛情はあっても接し方が分からず距離を取ってしまうケースがあります。
感情表現やスキンシップが負担になりやすく、無意識のうちに関心が薄い態度になることもあります。
ただし、子どもを大切に思っていないわけではなく、親密な関係への不安が影響しています。
適切な支援を受けることで関わり方は改善可能です。
― ごあいさつ ―
葛飾橋病院は昭和32年の開院以来、地域の皆様や多くの病院の方々にご協力をいただき、半世紀をこえる歴史を重ねてまいりました。
当コラム記事ではさまざまな心の病を持っている方のお手伝いができればと考えています。

