東京都葛飾区唯一の精神科単科病院

〒125-0041 東京都葛飾区東金町7-33-1

嘔吐恐怖症の特徴や症状をチェック|落ち着かせる方法も解説

精神

嘔吐恐怖症は、嘔吐することや吐き気に対して強い不安や恐怖を感じる不安症の一種です。

単なる「吐くのが苦手」という感覚とは異なり、日常生活に支障をきたすほどの不安が続く点が特徴とされています。

症状は精神的な不安だけでなく、動悸や吐き気、回避行動として現れることも少なくありません。

この記事では、嘔吐恐怖症の主な特徴や症状をチェックしながら、不安を落ち着かせるための基本的な考え方や対処法について解説します。

嘔吐恐怖症は限局性恐怖症の一種

嘔吐恐怖症は、特定の対象や状況に強い恐怖を感じる限局性恐怖症に分類される不安障害の一つです。

主に「嘔吐すること」「他人が吐く場面を見ること」「吐き気を感じる身体感覚」などが恐怖の対象となります。

恐怖や不安は実際の危険性に比べて過剰であり、自分でも「必要以上に怖がっている」と理解していても抑えることが難しい点が特徴です。

尾内 隆志
尾内 隆志

監修者コメント

嘔吐恐怖症になると外食や人混みを避けるなどの回避行動が続きます。

その結果、日常生活や社会生活に影響を及ぼすことがあるでしょう。

嘔吐恐怖症の原因

嘔吐恐怖症の原因は一つに限られず、過去の経験や心理的要因が複合的に関係していると考えられています。

多くの場合、嘔吐に対する強い恐怖が学習され、不安や回避行動として定着します。

また、不安障害やパニック障害など、他の精神疾患と関連して症状が現れるケースも少なくありません。

過去のトラウマ的経験によるもの

嘔吐恐怖症は、過去に経験したつらい出来事をきっかけに発症することがあります。

たとえば、激しい嘔吐を伴う体調不良や、周囲の人が吐いた場面を目撃した経験などが強く記憶に残るケースです。

その際に感じた恐怖や苦痛が「嘔吐=危険」「嘔吐=耐えられないもの」と結びつき、不安反応として定着します。

時間が経過しても記憶が引き金となり、吐き気や関連する状況に過敏に反応するようになります。

他の精神疾患と併発する場合もある

嘔吐恐怖症は、パニック障害や全般性不安障害など、他の精神疾患と併発することがあります。

特に、嘔吐への強い不安がきっかけとなり、動悸や息苦しさを伴うパニック発作を引き起こすケースも見られます。

こうした発作への恐怖がさらに不安を強め、外出や食事を避けるなどの回避行動につながることがあります。

尾内 隆志
尾内 隆志

監修者コメント

他の精神疾患との併発が疑われる場合は、症状を正確に判断するためにも専門的な治療を受けることが重要です。

嘔吐恐怖症の特徴や症状をチェック

嘔吐恐怖症では、精神面・身体面・行動面にさまざまな特徴や症状が現れます。

これらは人によって程度や現れ方が異なりますが、共通するパターンも多く見られます。

ここでは、代表的な特徴や症状を整理しながら、ご自身の状態をチェックしてみましょう。

強い不安を感じる精神的症状

嘔吐恐怖症の中心となるのは、嘔吐に対する強い恐怖や不安です。

吐く可能性がある状況に直面すると、「吐いてしまうのではないか」という考えが繰り返し浮かび、不安が急激に高まります。

実際には嘔吐の可能性が低い場合でも、恐怖感が抑えられず、常に身体の異変に注意を向けてしまう傾向があります。

動悸や吐き気などの身体的症状

嘔吐恐怖症では、「吐くかもしれない状況」を想像しただけで強い不安が生じ、それに伴って動悸・吐き気・めまい・胃痛などの身体症状が出ることがあります。

強い不安に伴い、以下のような身体症状が現れることがあります。

  • 動悸、心拍数の増加
  • 吐き気や胃の不快感
  • 息苦しさ、過呼吸
  • めまい、ふらつき
  • 発汗、手足の震え

実際には胃腸の病気がなくても、緊張や不安で胃腸の動きが乱れ、気持ち悪さや「今も吐きそう」という感覚が強く出ることがあります。

これらの症状は不安反応によるものであり、身体の異常ではない場合が多いものの、症状そのものが恐怖をさらに強める原因になります。

行動の特徴

嘔吐への恐怖を避けるため、日常生活において特定の行動を避けるようになることがあります。

  • 電車やバスなど、すぐに降りられない乗り物に乗れない
  • 生ものや傷みやすい食品を避ける
  • 外食や人と食事をすることが怖い

こうした回避行動が続くと、生活範囲が狭まり、社会生活への影響が大きくなることがあります。

嘔吐恐怖症を落ち着かせる方法

嘔吐恐怖症の不安や身体症状は、適切な対処を知っておくことで落ち着かせやすくなります。

強い不安を感じたときに慌ててしまうと、症状がさらに増幅することも少なくありません。

ここでは、日常生活の中ですぐに実践できる、嘔吐恐怖症を落ち着かせるための基本的な方法を紹介します。

落ち着く場所に移動する

不安や動悸が強まったときは、できるだけ人目や刺激の少ない場所に移動することが大切です。

静かな環境に身を置くことで、過剰に高まった緊張が和らぎやすくなります。

呼吸が速くなっている場合は、吸うことよりもゆっくりと息を吐くことを意識すると、不安反応が落ち着きやすくなります。

吐き気を和らげる姿勢をとる

吐き気があるときは、前かがみの姿勢や上半身をやや起こした姿勢をとると、胃への圧迫感が軽減されることがあります。

無理に横になるよりも、椅子に腰掛けて背中を支えるなど、身体が楽だと感じる姿勢を探すことが重要です。

姿勢を整えるだけでも、身体症状が和らぐ場合があります。

服装を工夫する

締め付けの強い服装は、腹部の圧迫感や息苦しさを強め、不安を助長することがあります。

症状が出そうな場所へ行く際は、ゆったりとした服装を選ぶことが安心につながります。

身体的な負担を減らす工夫をすることで、不安が高まりにくい状態を保ちやすくなります。

嘔吐恐怖症の治療は薬物療法と心理療法

嘔吐恐怖症の治療では、症状の強さや生活への影響に応じて、薬物療法と心理療法を組み合わせて行うのが一般的です。

不安や身体症状を一時的に和らげる方法と、恐怖そのものに向き合う方法を段階的に進めていきます。

ここでは、それぞれの治療法の特徴と役割について整理して解説します。

薬物療法

薬物療法は、不安や動悸、吐き気といった症状を軽減する目的で行われます。

主に抗不安薬や抗うつ薬が用いられ、強い不安が続く場合や日常生活に支障が出ている場合に検討されます。

薬によって不安の高まりが抑えられると、外出や治療への取り組みがしやすくなると感じられます。

尾内 隆志
尾内 隆志

監修者コメント

使用にあたっては医師の判断のもと、効果と副作用のバランスを確認しながら治療を進めることが重要です。

心理療法

心理療法では、嘔吐に対する過度な恐怖や考え方の癖に働きかけます。

代表的な方法として、認知行動療法があり、不安を強めている思考や回避行動を整理し、少しずつ修正していきます。

恐怖を完全になくすことを目指すのではなく、不安があっても生活できる状態を目標とする点が特徴です。

継続的に取り組むことで、不安への対処感覚が身についたと感じられるようになります。

嘔吐恐怖症のよくある質問・Q&A

Q
嘔吐恐怖症は自力で克服できますか?
A

結論から言うと、軽度であれば自力でも改善は可能ですが、症状が強く日常生活に支障がある場合は専門家の治療を併用した方が安全で効果的です。

自力でできる対策としては、腹式呼吸や漸進的筋弛緩、マインドフルネスなどのリラクゼーション法、思考の見直し(認知再構成)、段階的に恐怖刺激に慣れる「段階暴露」があります。

これらを数週間続けることで、不安をある程度コントロールできるようになります。

しかし、外食や通勤、仕事・学校生活に大きな制限が出ている場合や、体重や栄養状態に影響が出ている場合は、心療内科・精神科、あるいは認知行動療法ができるカウンセラーへの相談を強くおすすめします。

Q
嘔吐恐怖症は日常生活にどんな支障をきたしますか?
A

嘔吐恐怖症は、日常生活のさまざまな場面に支障を及ぼします。

まず、食事面では外食や人と一緒の食事を避け、自宅で安全だと感じるものしか食べられず、過度な食事制限が体重減少や栄養不足につながることがあります。

社交や人間関係では、飲み会やイベントなどを避けることで友人関係や恋愛関係が希薄になり、家族との食事や子育て、パートナーとの親密さにも影響する場合があります。

さらに、仕事や学校では、通勤や会議、授業などを避けることで欠勤や遅刻が増え、出張や業務上の選択肢も制限されることがあります。

外出や趣味の制限も起こり、常にトイレの位置を確認したり、吐かないための行動に縛られることで、心理的にも緊張状態が続きやすくなります。

Q
嘔吐恐怖症と拒食症の違いは何ですか?
A

嘔吐恐怖症と拒食症の最大の違いは、行動の動機にあります。

嘔吐恐怖症では「吐くことへの強い恐怖」が中心で、食べたい気持ちはあるものの吐くのが怖くて食事を避けてしまうのが典型です。

体重や体型へのこだわりは強くなく、食事が制限されるのは予期不安や過去の嘔吐体験によるものです。

一方、拒食症では「痩せたい」「太るのが怖い」というやせ願望が行動の中心で、自ら積極的に食事を制限し、体重や体型に強い執着があります。

診断や治療も異なり、嘔吐恐怖症は認知行動療法や抗不安薬で恐怖への段階的対応を行うのに対し、拒食症は栄養管理や心理療法・家族療法を組み合わせた包括的治療が中心です。

また、両者が併発することもあり、痩せたい気持ちと吐く恐怖のどちらが強いかを丁寧に見極めることが重要です。

この記事の監修

葛飾橋病院 院長
尾内 隆志

葛飾橋病院診療案内

― ごあいさつ ―

葛飾橋病院は昭和32年の開院以来、地域の皆様や多くの病院の方々にご協力をいただき、半世紀をこえる歴史を重ねてまいりました。
当コラム記事ではさまざまな心の病を持っている方のお手伝いができればと考えています。

  • 平成12年4月〜平成13年5月 東京大学医学部附属病院 精神神経科
  • 平成13年6月〜平成15年5月 財団法人 金森和心会 針生々丘病院 精神科
  • 平成15年6月〜平成17年5月 医療法人社団 柏水会 初石病院 精神科
  • 平成17年6月〜平成18年12月 医療法人社団 健仁会 手賀沼病院 精神科
  • 平成19年1月〜 医療法人遮断 一秀会 葛飾橋病院 理事長
  • 精神保健指定医
  • 認定精神科医
  • 日本精神神経学会専門医
  • 日本医師会認定産業医
  • 日本医師会会員
  • 日本精神科病院協会 会員
  • 東京精神科病院協会 会員
  • 東京都病院協会 会員
  • ル・ソラリオン葛飾非常勤(嘱託)医師
この記事を書いた人
葛飾橋病院スタッフ

葛飾橋病院のコラムページでは長年の地域精神の実績を踏まえた上で、地域に根づいた診療を行うとともに心の病で悩んでいる方に、精神科医の目線での情報を発信していくコラムページになります。
少しでも気持ちを落ち着いていただけるようにコラム記事を書いていきますのでよろしくお願いいたします。

葛飾橋病院スタッフをフォローする
精神