
歓迎会の日が近づくだけで、お腹が痛くなります。毎回ちがう理由をつけて断っています

家では普通に食べられるのに、取引先との会食だと箸が進みません
一人なら食べられるのに、人と一緒だと食べられない。この差があるせいで、「好き嫌い」や「わがまま」と受け取られてしまうことがあります。
ですが、人前で食べられないのは性格の問題ではありません。多くは不安のあらわれ方のひとつとして理解され、治療の対象になります。
言葉の関係を先に整理しておきます。
| 呼び名 | 指しているもの |
|---|---|
| 不安症 | 不安や恐怖が強すぎて生活に影響が出ている状態の全体 |
| 社交不安症 | そのうち、人前や注目される場面で強い不安が出るもの |
| 会食恐怖症 | さらにそのうち、食事の場面で強く出るもの |
まずは、いまの状態を確かめるところから始めましょう。次のチェックリストは、どなたでも費用なしで使えます。
これは診断ではありません。体の病気や別のこころの病気が隠れていることもあるため、最終的な判断は医療機関で受けてください。
会食恐怖症の診断テスト

このテストは、自分の状態を言葉にして、相談のときに伝えやすくするためのものです。当てはまる数で病気が決まるわけではありません。
「たまにそうなる」ではなく、「最近くり返している」と感じるものを選んでみてください。
✓会食恐怖症の診断テスト
当てはまるものを選ぶと、下に結果が出ます。「最近くり返している」と感じるものだけ選んでください。
選んだ項目:0/10
※これは診断ではありません。当てはまる数で病気が決まることも、受診するかどうかが決まることもありません。選んだ内容がどこかに送信されることはありません。
選んだ内容はどこにも送信されません。結果はその場で表示されるだけです。
「一人なら普通に食べられる」の項目は、ほかとは意味合いが違います。相手がいるときだけ変わるのかどうかを確かめるための項目なので、当てはまった数には数えていません。
体重や気分のことが気になる方は、テストの下にある開閉式の枠も確かめてみてください。当てはまる項目があれば、ほかのチェックより先に結果に出ます。
食事中に体に出る反応

不安が強くなると、気持ちだけでなく体にも変化が出ます。動悸、息苦しさ、手の震え、発汗、のどが締まる感じ、おなかの痛みなどです。
体の反応は、食事の当日だけに出るとはかぎりません。予定が決まった時点から当日まで、ずっと続くこともあります。
店に向かう途中から落ち着かなくなる、席についた瞬間にのどが締まる、という形で出る方もいます。
どのくらい続いているか
チェックの数と同じくらい大事なのが、いつから続いているかです。
診断のときの目安としては、その状態が成人で6か月、子どもで4週間続いているかどうかを見ます。
ただし、これは診断に使う目安であって、相談してよいかどうかの条件ではありません。期間が短くても、困っているなら相談して構いません。
診断テストの結果の見方

当てはまった数を合計して線を引く、という使い方はしません。見るところは次の4つです。
このうち、いちばんの目安は1つ目です。避けるようになっていて生活に影響が出ているなら、当てはまった数が少なくても相談する理由になります。
当てはまる数が少なくても迷うとき
チェックの数が少なくても、判断に迷うことはあります。そんなときは、最近の自分をふり返って、次のどれかに心当たりがあるかを見てみてください。
どれかひとつでも当てはまって困っているなら、相談してよい状態です。
ほかの病気との見分けで気をつけること
人前で食べられない状態は、会食恐怖症だけで起こるわけではありません。見分けるときの手がかりをまとめます。
| もしかすると | こんな特徴があるとき |
|---|---|
| うつ病 | 一人で食べていても食欲がない。気分の落ち込みが続く |
| 嘔吐恐怖症 | 不安の中心が「吐くこと」そのものにある |
| 摂食障害 | 体重や体型のことが頭から離れない。体重が減っている |
| 体の病気 | 食事の場面以外でも症状が出る。飲み込みにくさが続く |
吐くことへの不安が中心にあるときは、嘔吐恐怖症の特徴や症状をチェックもあわせて読んでみてください。
当てはまるものがあるときは、摂食障害の可能性があります。早めに医療機関に相談してください。
摂食障害では、周りの人は心配しているのに本人は病気だと思っていないことがあります。だから「自分は違う」と感じていても、当てはまる項目があるなら相談してください。見分けるときは、体重や体型へのこだわりがあるかどうかもあわせて見ます。
こうしたときは、うつ病が重なっていることがあります。不安症は、うつ病などほかのこころの病気にともなって起こることもあるため、うつ病のときに出やすい行動もあわせて確かめてみてください。
会食恐怖症とは人前の食事がこわくなる状態

会食恐怖症とは、人と一緒に食事をする場面で強い不安が出て、その場面を避けるようになっている状態です。
大事なところを先にお伝えすると、これは我慢して乗り切るものではなく、治療の対象になる状態です。
会食恐怖は、人前での食事に強い恐怖を感じる症状です。社交不安症のひとつに位置づけられています(日本不安症学会・2024年の総説より。記事末の参考資料の1つ目)。
会食恐怖は、独立した病名というより「症状」として扱われています。ただ、病名として立っていないから軽い、ということではありません。
「外食恐怖症」「人前でご飯が食べられない」と呼ばれることもありますが、指している状態は同じです。
食事の場面で出る症状
症状は、体に出るものと、頭に浮かぶ考えに分けると整理しやすくなります。
体に出るのは、動悸、息苦しさ、手の震え、発汗、のどが締まる感じ、おなかの痛みなどです。
頭に浮かぶのは、「残したら失礼だと思われる」「食べ方を変に思われていないか」「また気分が悪くなるのではないか」といった考えです。
周りからは「少食な人」としか見えないため、つらさが伝わりにくいのもこの状態の特徴です。
社交不安症との関係
社交不安症は、人前に出る、注目される、評価されるといった場面で強い不安を感じ、その場面を避けるようになる状態です。
食事も、見られながら評価されていると感じやすい場面のひとつです。社交不安症のなかで、特に食事の場面で強く不安が出るものが、会食恐怖症と呼ばれています。
知っておきたいのが、相手によって出方が変わるという点です。
上司や取引先、初対面の人のように「評価されている」と感じやすい相手ほど強く出ます。家族や気心の知れた友人となら平気、というのは珍しいことではありません。
食欲そのものが落ちているわけではなく、見られていると感じる度合いで変わっている、と考えると説明がつきます。

「一人なら食べられるのに」とご自分を責める必要はありません。人から見られていると感じる場面で強く出る、という仕組みがあるためです。
意志の強さの問題として扱わないでください。
会食恐怖症になりやすい人

なりやすい傾向はあります。ただし、性格が弱いからなるわけではありません。
過去の症例を集めて整理したところ、男性の割合が多いこと、10代後半から20代前半など若い時期に始まる方が多いことが傾向として見えています。
ただし報告されている症例の数は限られていて、確かなことは言えません。どれくらいの人にあるのかもまだ分かっていません。
なぜ若い時期に多いのかは、まだ分かっていません。
もともとの気質
次の表は、診察の場でよくみられる例です。こうした性質は、食事の場面で不安につながりやすくなります。
| もともとの性質 | 食事の場面でどう働くか |
|---|---|
| 人からどう見られるかが気になる | 食べ方を見られている気がする |
| きちんとやりたい気持ちが強い | 残すことが許せなくなる |
| 人に迷惑をかけたくない | 断れずに場に出て、つらくなる |
どれも、ふだんは長所として働く性質です。周りに気を配れる、仕事をていねいに仕上げる、という形であらわれます。
その気配りが食事の場面に向いたときだけ、つらさに変わります。 性質そのものを変える必要はありません。
こうした性質があると、「恥ずかしい」「悪く思われている」と悪いほうに考えが傾きやすくなります。これは社交不安症でよくみられる考え方の癖です。
きっかけになりやすい出来事
ある出来事をきっかけに始まった、と話される方もいます。
こうした出来事があると、次の食事の場面で「また同じことが起きるかもしれない」と身構えるようになります。

きっかけがはっきりする場合も、はっきりしない場合もあります。原因が特定できなくても治療は進められますので、「理由が分からないから相談できない」とは考えないでください。
急に始まったように感じるのはなぜ?

「ある日を境に食べられなくなった」と感じる方は少なくありません。
答えを先に書くと、思い当たるきっかけがあっても、症状がはっきりするまでに時間が空くことがあります。
報告された症例から見えた傾向のひとつに、きっかけと発症のあいだに期間が空くことがあります。だから、あとからふり返ると「急に始まった」ように見えるわけです。
予期不安という先回りの不安

会食の場で気分が悪くなった経験があると、「また同じことが起きるのではないか」という不安が残ります。
この、まだ起きていないことに対して先回りで起きる不安を予期不安といいます。パニック症などの説明で使われる言葉です。起こってもいないことが気になって離れないという感覚は、起こってもいないことに不安になる原因は?でも詳しく扱っています。
予期不安が強くなると、その場面を避けること(回避)が増えます。避ければ、そのときは安心できます。
回避は、はっきり断るとはかぎりません。
- 「先に食べてきた」と言って席だけ参加する
- 飲み物だけ頼んで食べない
- 予定が入りそうな時期に、あらかじめ別の用事を入れる
こうした小さな回避が積み重なると、本人も「自分は苦手なだけ」と考えて、相談の機会を逃しやすくなります。
避けるほど怖さが残る理由
避けるのは、自分を守るための自然な反応です。悪いことをしているわけではありません。
ただ、避け続けると困ったことが起きます。
不安は、最初の5分くらいがもっとも強く、そのあとは横ばいになったり軽くなったりしていきます。ただし、下がり方や時間には個人差があります。
避けてその場を離れると、この「時間がたてば落ち着く」という体験ができません。だから、いちばん強かったときの怖さのまま記憶に残ります。
避けると、そのときは楽になります。けれど怖さは減らないまま次に持ち越されます。これが、避けるほど苦手になっていく仕組みです。
避けずに、低いハードルの場面から体験を重ねていくと、怖さは小さくなっていきます。どの場面からどこまでやるかは、自分だけで決めず、医師や心理職と一緒に決めてください。
会食恐怖症の治し方

治し方の柱は認知行動療法と薬による治療です。どちらか一方とはかぎらず、組み合わせることもあります。
認知行動療法
不安を強めてしまう考え方と行動を、少しずつ変えていく治療です。
怖い場面をいきなり全部やるのではなく、ハードルの低いところから順番に慣らしていきます。進め方の一例が次の段階です。
| 慣らす順番 | 場面の例 |
|---|---|
| 1段階目 | 家族と短い時間の食事 |
| 2段階目 | 親しい友人とカフェ |
| 3段階目 | 少人数での外食 |
| 4段階目 | 職場の人との食事 |
どの段階から始めるかは、自分ひとりで決めず、医師や心理職(臨床心理士や公認心理師などの専門職)と相談して決めてください。
あわせて、「残したら失礼だと思われる」といった考えが本当にそうなのかを、事実に照らして確かめていきます。周りの人が実際にどう思っていたかを聞いてみる、といった形です。
不安症全般では、認知行動療法に薬による治療と同じか、それ以上の効果があることが知られています。やり方は不安症のタイプによってさまざまで、多くは保険適用になっています。受けられるかどうかは相談先の医療機関に確認してください。
薬による治療
不安症には、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という種類の薬が使われることがあります。うつ病の治療にも使われる薬ですが、うつ病でなくても不安の症状に対して使われます。
明日からよくなるというものではなく、続けることで効果が出てきます。効き方や副作用の出方には個人差があるため、合うかどうかは医師と相談しながら判断します。
すぐに効くタイプの抗不安薬もありますが、続けていると依存が生じることがあるため、医師の指示のもとで使う必要があります。
不安を消すことだけが目的になって薬を飲むと、「この薬がないと外食できない」という形になりやすくなります。薬は、慣らす練習を支えるために使うものと考えてください。
治療と並行して日常でできること
通院と並行して、自分で試せることもあります。
呼吸は、吸うことより吐くことをゆっくりにするのがコツです。
もうひとつが、場の作り方です。幹事に「少なめで」と先に伝えておく、取り分け式の店を選ぶ、通路側の席にしてもらう、といった工夫があります。
その場に参加したうえで負担を減らす工夫は、回避とは違います。 参加そのものをやめる、席に座っても食べない、というのが回避です。
受診の目安と何科に行くか

期間の長さにかかわらず、生活に支障が出ているなら相談して構いません。
急ぎたいときと、様子を見てよいとき
迷ったときの目安です。
| 状態 | 動き方 |
|---|---|
| 体重が減っている、水分もとれない、立ちくらみがする | すぐに受診 |
| 誘いを断り続けている、仕事や進学に影響が出ている | 早めに相談 |
| 困ってはいるが生活は回っている | 相談してよい。時期は自分で決めて構わない |
「こんなことで病院に行っていいのか」とためらって、長く我慢される方がいます。ですが、困っている時点で十分な相談の理由になります。
受診前にメモしておくと役立つこと。①どんな場面で不安が強くなるか(相手・人数・場所)②いつごろから続いているか ③断った予定や避けている場面
何科を受けるか
困りごとによって、最初に行く先が変わります。
| こんなとき | 相談先 |
|---|---|
| 食事の誘いを断り続けている、生活に影響が出ている | 精神科・心療内科 |
| 食事の場面以外でも動悸や息苦しさがある | まず内科 |
| 体重が減ってきた | まず内科で体の状態を確かめ、並行して精神科へ |
| 一人で食べていてもつかえる、むせる | 内科や耳鼻咽喉科 |
| 子どもの給食や学校での食事が心配 | かかりつけの小児科と学校(担任・養護教諭) |
精神科と心療内科は、どちらでも相談できます。 迷ったときは通いやすいほうで構いません。
食事の場面以外でも動悸があるときに内科を先にすすめるのは、甲状腺の病気(甲状腺機能亢進症)や不整脈、貧血によって不安が生じることもあるためです。体の病気がないことを確かめてから、こころの治療に進みます。
お子さんの場合は、体重が増えない、身長の伸びが止まる、食べられるものが極端に減っているときは、早めに小児科に相談してください。
人がいる場面で強く緊張が出るときは、診察室で向かい合うこと自体が負担になることがあります。
オンライン診療なら自宅から画面越しに相談できるので、最初の一歩としては対面より負担が小さくなります。
関連記事:対面だと緊張が強いときのオンライン診療
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診察では、いつからどんな場面で困っているかを確認していきます。進め方は、ご本人の状態に合わせて相談しながら決めるのが基本です。
いきなり苦手な場面に取り組む必要はありません。
つらさが強いときは、次の窓口も使えます。
会食恐怖症のよくある質問
- Q会食恐怖症の診断テストでどこまで分かりますか?
- A
分かるのは「相談したほうがよい状態かどうか」までです。病名を決めるのは、問診や必要な検査を行った医師です。テストの結果だけで診断はできません。
- Q会食恐怖症は治りますか?
- A
治療の対象になる状態で、認知行動療法と薬による治療があります。どれくらいで楽になるかは、続いている期間や背景によって幅があり、一概には言えません。避ける行動が増える前のほうが取り組みやすくなります。
- Q会食恐怖症は何人に1人ですか?
- A
どれくらいの人にあるのかは、まだ明らかになっていません。実態を調べる調査がこれから必要だ、という段階です。
数字が出ていないだけで、同じ悩みで受診される方はいます。一人だけが抱えている問題ではありません。
- Q人前でご飯が食べられないのは病気ですか?
- A
病気かどうかは、食べられないことよりも、その場面を避けて生活に支障が出ているかどうかで考えます。多くは社交不安症として治療の対象になりますが、ほかの病気が関係していることもあるため、一度相談してください。
- Q外食恐怖症と会食恐怖症は違いますか?
- A
指している状態は同じです。人前での食事に強い不安が出る状態を、「外食恐怖症」と呼ぶこともあります。
- Q受診したほうがよいのはどんなときですか?
- A
誘いを断り続けている、仕事やつきあいに影響が出ているときです。体重が減っている、水分もとれないときは、急いで受診してください。
- Q自力で治せますか?
- A
困りごとが軽く、避ける行動がまだ増えていない段階なら、慣らし方を工夫することで楽になる方もいます。ただし避ける場面が増えているときは、一人で進めると悪循環になりやすいため、専門家と一緒に進めたほうが無理なく取り組めます。
- Q市販薬で治せますか?
- A
市販薬は会食恐怖症の治療薬ではありません。不安を抑える目的で使い続けると、依存につながることがあります。医療機関に相談してください。
まとめ

人前で食べられないのは、性格や気の持ちようの問題ではありません。多くは社交不安症として扱われ、治療の対象になります。
チェックリストで確かめたいのは当てはまった数ではなく、その場面を避けて生活に影響が出ているかと相手によって変わるかの2点です。
避ける行動が増えるほど不安は強くなりやすいため、早めに相談するほど取り組みやすくなります。
会食恐怖症で意識したい3つのこと。①相手や人数で不安の出方が変わるのが特徴 ②避け続けるより、低いハードルから慣らす ③生活に支障が出ているなら、期間にかかわらず相談する
食事の場面は、仕事でも人づきあいでも避けて通れません。そこで困っているなら、十分に相談する理由になります。
参考資料
- 伊藤知也・尾形明子「会食恐怖に関する研究の動向と展望」不安症研究 16巻1号 38-47(日本不安症学会・2024年)https://doi.org/10.14389/jsad.16.1_38
- 国立精神・神経医療研究センター こころの情報サイト「不安症」https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=BLA9JV0KhiWPIMzX
- 国立精神・神経医療研究センター こころの情報サイト「摂食障害」https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=daWRhKdTNvsjgjM5
- 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所「不安との付き合い方」(呼吸法の実技)https://www.ncnp.go.jp/nimh/behavior/anxiety/index.html
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/
― ごあいさつ ―
葛飾橋病院は昭和32年の開院以来、地域の皆様や多くの病院の方々にご協力をいただき、半世紀をこえる歴史を重ねてまいりました。
当コラム記事ではさまざまな心の病を持っている方のお手伝いができればと考えています。


