
くたくたなのに、布団に入ると目が冴えてしまいます。

疲れているんだから、すぐ眠れそうなものなのにと思います。
体は疲れているのに眠れない。一見おかしな状態ですが、ちゃんと理由があります。
日中の緊張が夜まで続いていると、体が疲れていても眠りには入りにくくなります。ストレスと緊張は、やすらかな眠りを妨げるからです。
そしてもう1つ、そもそも眠る時間が足りていないことも少なくありません。忙しい日が続くほど、眠るための準備にあてる時間から削られていきます。
眠れない自分を責める前に、どこで切り替えがうまくいっていないかを見てみてください。
この記事でわかることは次のとおりです。
疲れてるのに眠れないのはなぜ?
体の疲れと、眠りに入る準備は別ものです。
筋肉を使った疲れがあっても、頭が働き続けていれば眠りには入れません。眠りに入るには、体が休むモードに切り替わる必要があります。
体の疲れと脳の興奮は別
日中に気を張って過ごした日ほど、夜になっても神経が高ぶったままになります。
仕事のやりとりを頭の中で反芻していたり、明日の段取りを考えていたりすると、体が疲れていても眠気は出てきません。
寝る前に体をリラックスさせることが、眠りに入るためのコツだとされています。直前まで頭を使っていると、その時間がとれません。
「疲れているのだからすぐ眠れるはず」と思うほど、眠れない自分に焦ってしまいます。
疲れすぎると逆に寝つきが悪くなる
適度な運動は眠りを助けますが、激しい運動は交感神経を興奮させて寝つきを悪くします。
夜遅くのトレーニングや、残業でぎりぎりまで集中した日に寝つけないのは、このためです。
体を動かした疲れが、そのまま眠気になるわけではありません。
運動は午前より午後に、軽く汗ばむ程度がよいとされています。短期間の集中的な運動より、無理のない有酸素運動を続けるほうが効果的です。
「疲れ」が別の不調のサインであることも
疲れがとれない状態が長く続いているなら、眠れないことだけでなく、疲れの側にも理由があるかもしれません。
こころの病気の多くは不眠をともないます。気分の落ち込みや意欲の低下が一緒に出ているときは、疲れのほうにも目を向けてください。
何週間も疲れがとれず、眠れない日も続いているときは、一度医療機関で相談したほうが早く楽になります。
疲れているのに眠れない5つの原因

当てはまるものがないか見てみてください。
| 原因 | よくある場面 | 対策 |
|---|---|---|
| 寝る直前まで 仕事や家事 | 帰宅が遅く 寝るまで動き続ける | 就寝前に 30分の余白を作る |
| 考えごとが 止まらない | 布団の中で 反省会が始まる | 寝る前に 紙に書き出す |
| 寝だめで リズムが乱れる | 休日に 昼まで寝ている | 平日の睡眠時間を 見直す |
| カフェイン お酒 | 疲れをとるつもりで 夕方にコーヒー | 夕方以降は 控える |
| 体の病気や こころの病気 | 疲れが 何週間も続く | 医療機関で 相談する |
寝る直前まで動き続けている

帰宅して家事をこなし、そのまま布団に入ると、体はまだ活動モードのままです。
とくに帰りが遅い日は、夕食・入浴・片づけを済ませた時点でもう就寝時刻になっています。切り替える時間がないまま、布団に入ることになります。
やることを減らせないときは、順番を入れ替えるだけでも変わります。寝る直前に回していた作業を、帰宅直後に前倒しするだけで余白が作れます。
就寝1〜2時間前に入浴すると、寝つくまでの時間が短くなることが報告されています。入浴を「切り替えの合図」にすると習慣にしやすくなります。
考えごとが止まらない

布団に入ると、その日にあったことや明日の予定が次々に浮かんできます。
止めようとするほど頭は働いてしまうため、止めるのではなく外に出すほうがうまくいきます。寝る前に、気になっていることと明日やることを紙に書き出しておきます。
解決策まで書く必要はありません。「明日の朝に考える」と決めておくだけで、布団の中で考え続けずにすみます。
休日の寝だめが効いていない

平日の睡眠不足を休日に取り戻そうとする「寝だめ」では、実際には眠りをためることはできません。
毎週末に時差のある地域へ旅行を繰り返すのと似ているため、社会的時差ボケとも呼ばれます。肥満や糖尿病、うつ病の発症リスクとの関連も報告されています。
休日に長時間の睡眠が必要なのは、平日の睡眠が足りていないサインです。休日に長く寝るより、平日の睡眠時間を見直すほうが先です。
平日に6時間以上眠れていても、休日に2時間以上長く寝る習慣があると、寿命が短くなるリスクは下がらないと報告されています。
働きすぎていませんか

疲れているのに眠れない人の背景には、そもそも眠る時間が足りていないことがあります。
労働時間が長くなるほど睡眠時間は短くなります。長く働く人ほど、睡眠が6時間を切る割合が大きくなります。
1日の労働時間が7時間以上9時間未満の人を基準にすると、男性では次のように報告されています。
| 1日の労働時間 | 睡眠が6時間未満になるリスク |
|---|---|
| 7時間以上 9時間未満 | 基準 |
| 9時間以上 | 2.76倍 |
| 11時間以上 | 8.62倍 |
成人の睡眠は6時間以上を目安に確保することがすすめられています。
働く時間が長いと、睡眠だけでなく、寝る前に気持ちを落ち着ける時間も削られます。疲れているのに眠れない状態は、ここから生まれていることが少なくありません。
まずは1週間、何時に寝て何時に起きたかを書き出してみてください。感覚よりも短いことに気づく方が多くいます。
睡眠で休養がとれている感覚を大事にする

睡眠は時間だけでなく、睡眠で休養がとれている感覚も大切だとされています。
この感覚が低いことは、心筋梗塞や狭心症などの心血管の病気、肥満・糖尿病、抑うつとの関連が報告されています。時間は足りているのに疲れがとれないときは、ここが下がっている可能性があります。
日本では、睡眠で休養がとれていると答える人は20歳以上の成人で7割程度で、年々減っています。裏を返すと、3割近くが休養をとれていないと感じています。
休養感を下げるもの
思い当たるものから1つずつ減らしていきます。

疲れているのに眠れないときは、眠る時間そのものが足りていないことも考えられます。まず何時に寝て何時に起きているかを書き出してみてください。
感覚より短いことに気づくことがあります。書き出したものは、受診するときの手がかりにもなります。
疲れた日にやりがちな逆効果の習慣

よかれと思ってやっていることが、眠りを遠ざけていることがあります。
「今日は早く寝よう」と早く布団に入る
疲れた日ほど早く布団に入りたくなりますが、眠気がないうちに入ると目が冴えます。
我慢して寝床にとどまるほど、不眠は悪化することが分かっています。疲れているのだから横になっていよう、とは考えないでください。
帰ってすぐソファでうとうとする
夕食後にソファで寝てしまうと、夜に眠るための眠気を前倒しで使ってしまいます。
そのあと布団に移ると、今度は目が冴えてしまうという流れになりがちです。
疲れをとるつもりの1杯
疲れた日の1杯は、寝つきを助けてくれるように感じます。ところがその効果は短時間しか続きません。
そのあとは深い睡眠が減り、早朝に目が覚めやすくなります。翌朝に疲れが残る原因になります。眠るためにお酒を使うのはやめてください。
今夜できる対処法

疲れている日ほど、寝る前の切り替えに時間をかけてください。
やることを増やすのではなく、寝る前の1時間をどう使うかを決めるだけでも変わります。
布団に入る前に30分の余白を作る
帰宅から就寝までを詰め込まず、照明を落として静かに過ごす時間を作ります。
テレビやスマートフォンの画面から離れるだけでも、頭の働きは落ち着いていきます。
何をするかより、予定を入れない時間をあらかじめ確保しておくことが大切です。30分がむずかしければ15分から始めてかまいません。
息をゆっくり長く吐く
寝る前に体をリラックスさせると、眠りに入りやすくなります。息を吐く時間を長めにとりながら、肩と手の力を抜いていきます。疲れた日ほど力が入ったままになっています。
ぬるめのお風呂や、好きな音楽を静かに聴く時間も同じ働きをします。自分が落ち着くと感じる方法でかまいません。
眠くないまま布団に入らない
疲れているからといって、眠気がないのに早く布団に入るのは逆効果です。
眠れないまま横になっていると、不安と緊張が増してますます目が冴えます。眠気が来ないまま時間が過ぎるときは、いったん布団を出て、薄暗い部屋で静かに過ごしてください。
明るい照明の下ではなく、薄暗いところで過ごすのがコツです。眠気が戻ってきたら布団に戻ります。
起きる時間を先に決める
眠れない日が続くと、寝る時間を早めようとしがちですが、先に整えるのは起きる時間です。
起きてすぐ強い光を浴びると体内時計がリセットされます。眠くなる時間が前に動くので、夜に寝つきやすくなります。早寝しようとするより、早起きを一定にするほうが近道です。
寝室にスマートフォンを持ち込まない
疲れて帰った日ほど、布団の中でスマートフォンを見てしまいます。寝室には持ち込まず、できるだけ暗くして寝るほうが眠りは深くなります。
寝る前に見るつもりがなくても、手の届くところにあると気になってしまいます。通知が鳴らなくても、時計を確認するたびに目が冴えます。
充電場所を寝室の外に決めておくと、意志の力に頼らずにすみます。目覚ましが必要なら、スマートフォン以外のものを使ってください。

疲れているのに眠れない日が続くと、寝る前の行動をあれこれ変えたくなります。まずは起きる時間を一定にすることだけ決めて、1週間続けてみてください。
寝室の温度と明るさを整える
眠るのに向いた室温は20℃前後、湿度は40〜70%くらいとされています。
暑さや寒さで目が覚める日が続いているなら、寝具や空調を見直すだけで眠りが変わることがあります。
夕方以降のカフェインを見直す
疲れているときほどコーヒーやエナジードリンクに手が伸びますが、カフェインには目を覚ます働きがあります。
尿を増やす働きもあるため、夜中にトイレで目が覚める回数も増えます。
1日のカフェインは400mgを超えないようにとされています。ドリップコーヒーなら、カップ4杯分(700cc程度)にあたります。
疲れてるのに眠れないのはうつのサイン?

疲労感と不眠が重なるだけで、うつ病と決まるわけではありません。忙しい時期に一時的に出ることもよくあります。
見分けるポイントは、眠れないこと以外の症状が何週間も続いているかどうかです。
こころの病気の多くは不眠をともないます。疲れと不眠が同時に続いているとき、背景にうつ病があることもあります。
眠れないことに加えてこうした症状があるときは、早めに精神科や心療内科に相談してください。
死にたい気持ちがある、自分を傷つけたくなる、消えてしまいたいと感じるときは、様子を見ずにすぐ精神科・心療内科を受診してください。
夜間や休日は、厚生労働省の相談窓口も使えます。まもろうよ こころに、電話とSNSの相談先がまとまっています。
ただし、疲れているのに眠れない日が数日あるだけであれば、多くは一時的なものです。心配ごとや環境の変化がきっかけの不眠は、数日から数週間でおさまることがほとんどです。
見分けるポイントは、眠れないこと以外の症状があるかどうかと、それが何週間も続いているかどうかです。
判断に迷うときは、自分で決めようとせず、一度相談してみてください。
疲れているのに眠りが浅いとき

寝つけてはいるのに、夜中に何度も目が覚める。朝起きても休んだ気がしない。こういうときは別の原因も考えます。
眠りを妨げる病気が隠れていることがあります。
| 気になるサイン | 考えられること |
|---|---|
| 大きないびき 呼吸が止まる | 睡眠時無呼吸症候群 |
| 寝る前に脚が むずむずする | むずむず脚症候群 |
| 夜中に何度も トイレに起きる | 体の病気 カフェインのとりすぎ |
これらは通常の睡眠薬では治らず、検査ができる医療機関での診断が必要です。
むずむず脚症候群は、寝る前にじっとしていると脚に不快感が出るため、寝つきが悪いタイプの不眠と間違えられることがあります。
これらの睡眠障害は50歳代以降に増えていきます。年齢とともに眠りが変わってきたと感じるときは、一度調べてもらうと安心です。
受診の目安

眠れない日と日中の不調が週3日以上あり、3か月以上続く場合は、慢性不眠症と診断されます。3か月未満は短期不眠症です。
ただし、3か月を待つ必要はありません。日中のつらさが出ている時点で相談してかまいません。
相談したほうがいいサイン
1つでも当てはまり、それが何週間も続いているなら、一度相談してみてください。
何科に行けばいいか

まずはかかりつけ医に相談してかまいません。病院で不眠について話すだけでも、眠れないことへの不安はやわらぎます。

疲れがとれない状態が続くと、それだけで気持ちが落ち込みやすくなります。眠れないことと疲れのどちらが先かを一人で判断しようとせず、一度相談してください。
オンライン診療なら、通院の時間をとらずに相談できます。
疲れてるのに眠れないときのよくある質問
- Q疲れているのに眠れないのはうつですか?
- A
疲労感と不眠が重なるだけで、うつ病と決まるわけではありません。忙しい時期に一時的に出ることもよくあります。
ただし、こころの病気の多くは不眠をともないます。気分の落ち込みや、趣味に興味がわかない状態が一緒にあり、何週間も続いている場合は、早めに精神科・心療内科に相談してください。
- Q疲れているのに寝たくないと感じるのはなぜですか?
- A
自分の時間がとれないまま1日が終わると、寝てしまうのが惜しく感じることがあります。
ただし夜ふかしが続くと睡眠時間が削られ、疲れがとれない状態が長引きます。翌朝の起床時間を変えないことから始めてください。
- Q疲れているのに眠りが浅いのはなぜですか?
- A
寝る前の飲酒やカフェイン、寝室の明るさや温度が関係していることがあります。
大きないびきや脚の不快感がある場合は、睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群の可能性もあるため、検査ができる医療機関に相談してください。
- Q休日に寝だめすれば疲れはとれますか?
- A
眠りをためることはできません。休日の寝坊で起床時間が大きくずれると、体内時計が乱れてかえって不調につながります。
休日に長く寝たくなるのは、平日の睡眠が足りていないサインです。
- Q疲れをとるには何時間寝ればいいですか?
- A
成人は6時間以上を目安にするとされていますが、必要な時間には個人差があります。日本人の睡眠時間は平均7時間半ほどです。
時間だけでなく、朝起きたときに休んだ感じがあるかどうかも合わせて見てください。時間は足りているのに休んだ気がしないときは、寝る前の習慣や寝室の環境を見直します。
まとめ
疲れているのに眠れない夜は、体ではなく頭が休めていないことが多いものです。寝る前に30分の余白を作ることから始めてみてください。
日中のつらさが続くときは、我慢せず医療機関に相談しましょう。
参考資料
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「不眠症」https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-02-001
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf
- 国立精神・神経医療研究センター こころの情報サイト「不眠症(睡眠障害)」https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=XpsDJBKfyaGD0mIx
― ごあいさつ ―
葛飾橋病院は昭和32年の開院以来、地域の皆様や多くの病院の方々にご協力をいただき、半世紀をこえる歴史を重ねてまいりました。
当コラム記事ではさまざまな心の病を持っている方のお手伝いができればと考えています。


